第II部 原子力研究開発利用の動向
第3章 新型炉の開発

1 新型転換炉

 ウラン資源のほとんど全てを外国に頼らなければならない我が国にとっては,今後必要となる核燃料を安定的に確保するとともに,その有効利用を図ることが重要である。そのためには高速増殖炉の開発を推進するとともに,その本格的導入前にも,使用済燃料から回収されるプルトニウムや減損ウランをできるかぎり早期にリサイクルして活用することが望ましい。
 新型転換炉は,我が国が世界に先がけてプルトニウムの本格的利用をめざして,開発を進めている自主開発炉であり,プルトニウム及び減損ウランを有効かつ容易に利用できる特性を有している。
 この新型転換炉の開発は,動力炉・核燃料開発事業団で進められており,同事業団が建設した原型炉「ふげん」は昭和54年3月に本格運転を開始して以降,順調に運転が続けられていた。その後昭和56年11月に行った第2回計画停止期間中に,冷却系配管の一部に応力腐食割れによる傷が発見されたため,補修工事等を行い,昭和56年11月運転を再開している。
 原型炉に続く実証炉の開発については,昭和54年3月,原子力委員会新型動力炉開発懇談会において,「動力炉・核燃料開発事業団は電気事業者等の協力の下に,実証炉の詳細設計を早急に進め,かつ必要な研究開発を実施する」ものとされ,これを受けて電気事業者と動力炉・核燃料開発事業団とのATR合同委員会において,原型炉の運転実績,実証炉の設計等について検討し,電気事業者の意見を実証炉設計に反映させる努力が続けられ,現在,基本設計及びこれに関連する研究開発が進められている。
 更に,原子力委員会は,昭和54年8月10日,「原子炉開発の基本路線における中間炉について」の決定の中で,新型転換炉開発については,これを精力的に進める必要があり,早急にチェックアンドレビューにとりかかるものとするとの考え方を示した。これを受けて,新型転換炉に関する技術的・経済的評価等を行い,新型転換炉実証炉の開発に関する今後の施策の確立に資するため,昭和55年1月,原子力委員会に「新型転換炉実証炉評価検討専門部会」が設置された。同専門部会は,昭和56年8月次の趣旨の報告書をまとめた。
 新型転換炉は我が国が世界に先がけてプルトニウムの本格的利用をめざしている自主開発炉であり,プルトニウム及び減損ウランを有効かつ容易に利用できるため天然ウラン所要量の削減等核燃料の有効利用を実現できるばかりでなく,プルトニウム蓄積量を減らし経済的負担を軽減できる等の多面的な効果が期待できる。また,経済性については,本格的商業化段階において,新型転換炉の発電原価は軽水炉より割高ではあるが石炭火力発電等と比肩し得る見通しであり,更に技術改良による経済性の向上も期待される。
 以上を考慮すると,高速増殖炉の実用化時期や軽水炉へのプルトニウム利用の見通し等との兼合いもあるが,現時点では,新型転換炉を原子力発電体系に組み入れることができるよう官民協力して開発を進めていくことが望ましく,このため,資金分担,実施主体等について関係者の間で合意が得られることが基本的前提となるが,大容量化に伴う技術の実証及び経済性の見通しの確立を目的とし,更に技術改良による経済性の向上を検討するため,実証炉を建設することが妥当である。
 実証炉の建設,運転に当たっては,民間が積極的役割を担うことが適切と考えられる。この場合,実証炉が開発初期にあるため未経験の問題が多いこと等によりその建設費及び発電原価は相当割高になることも予測されること,我が国のエネルギー・セキュリティの向上に寄与すること等に鑑み,国による適切な支援措置が必要である。
 なお,実証炉の建設・運転にあたって必要な研究開発については,国が積極的な役割を果すことが期待される。

(1)原型炉の運転
 原型炉「ふげん」は,昭和53年3月に臨界に達し,昭和54年3月から本格運転を開始して約1年間順調に運転を続けた後,昭和55年2月から同年5月まで第1回の定期検査を実施した。昭和55年6月に行った昭和55年度第1回計画停止後の出力上昇中,2回原子炉が自動停止したが,慎重な原因究明を経て,順調に運転を継続した。
 その後,昭和55年11月に行った第2回計画停止期間中,冷却系配管の一部に応力腐食割れによる傷が発見されたため,当該箇所の補修と予防対策を兼ねて,所要の配管取り替え工事を行うとともに,同工事と併行して行われた第2回定期検査においても各施設設備の健全性を確認し,昭和56年11月に運転を再開した。

(2)研究開発
 新型転換炉の研究開発は,原型炉「ふげん」の安全性,保守性,信頼性の確証及び実証炉の設計研究に主眼をおいて進められている。原型炉については,「ふげん」の運転実績等による運転コードの整備,運転保守,補修,検査の各機器等に関する開発を進め,また,実証炉については,基本設計及び設計に必要な実証試験を進めている。


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