第II部 原子力研究開発利用の動向
第1章 原子力発電

1 原子力発電開発の状況

(1)原子力発電開発の経過
 昭和41年7月に我が国最初の商業用原子力発電所である日本原子力発電(株)の東海発電所(コールダーホール型炉)が運転を開始したが,この年には新たに3基の商業用原子力発電所の原子炉設置許可(いずれも軽水炉)がなされた。また,これらに続く原子力発電所の建設計画の具体化も各電気事業者において検討され,原子力発電開発が本格化した。
 その後昭和40年代前半及び中頃において,原子力発電立地は順調に進展し,昭和44年度から昭和46年度の3カ年間においては,計16基,約1,300万キロワットの原子力発電所が電源開発基本計画に組み入れられた。こうした結果,昭和40年代末には,運転中の商業用原子力発電所は8基,約390万キロワット,更に建設中及び建設準備中のものは,17基,約1,430万キロワットに達した。
 しかしながら昭和40年代中頃から,環境保全及び安全性に対する国民の関心が高まり,この中で原子力発電所建設予定地点で一部地元住民による反対運動が起こり,原子力発電所の建設計画が遅延する傾向がでてきた。
 こうした中で,政府は地元住民の理解と協力を得つつ原子力発電所の立地の円滑化を図るため,種々の施策を講ずることとし,昭和48年度においては,公聴会の開催,公開資料室の設置等が行われ,昭和49年6月には,原子力施設等の周辺地域の整備を図るためいわゆる電源三法が公布された。また,国民の原子力開発利用に関する理解の向上に資するため,普及活動も積極的に行われた。更に,昭和48年末の石油危機を契機として,政府においては,エネルギーの安定確保に対する積極的な取り組みが行われ,昭和52年6月,総合エネルギー対策閣僚会議において要対策重要電源地点を指定する等,原子力発電所等の立地推進のための施策が実施された。その後も前記電源三法に基づく交付金の拡充,電源立地推進体制の整備等が行われた。また,昭和53年度には,原子力の安全確保体制を一層強化するとの観点から原子力委員会を改組し,新たに原子力安全委員会が設けられるとともに,安全規制行政の一貫化による安全規制の充実強化が図られた。これらの施策,更には石油代替エネルギーとしての原子力発電の必要性についての認識の高まり,関係者の努力等により原子力発電の立地は比較的順調に推移しつつあった。

 しかし,昭和54年3月に米国スリー・マイル・アイランド原子力発電所の事故が発生したことの影響もあり,昭和54年1月以降2年以上に渡って,原子力発電所の電源開発基本計画への組み入れが行われないということも生じた。
 この間においては,地元住民の意見を原子力行政に反映させるため昭和55年に最初の第1次及び第2次公開ヒアリングが開催された。また,電源三法に基づく交付金の拡充等,原子力発電所立地地域の要望に応え立地を円滑に進めるための努力も行われた。こうした状況の中で昭和56年3月になって3基の原子力発電所が電源開発基本計画に組み入れられ,原子力発電所の開発が再び進み出した。

(2)原子力発電の現状
 昭和56年3月に九州電力(株)の玄海原子力発電所2号炉が新たに営業運転を開始したことにより,我が国で営業運転中の商業用発電設備は計22基,総電気出力1,511万1千キロワットに達し,世界的にも米国,フランスに次ぐ規模になっている。

 この結果,昭和56年3月末現在の原子力発電設備容量は,総発電設備容量の約12%を占め,また,昭和55年度の総発電電力量の約16%を占めるに至っている。
 また建設中の商業用発電設備は,昭和56年3月に九州電力(株)川内原子力発電所2号炉の工事計画が認可されたことにより,計11基,総電気出力1,011万キロワットとなっている。
 建設準備中の商業用発電設備は,昭和56年3月東京電力(株)の柏崎・刈羽原子力発電所の2号炉・5号炉及び中国電力(株)の島根原子力発電所2号炉並びに昭和56年11月,東北電力(株)の巻原子力発電所1号炉の計4基が新たに加わったことにより,計6基,総電気出力610万5千キロワットとなっている。
 これら運転中,建設中及び設備準備中のものは,合計39基,3,172万6千キロワットとなっている。

(3)将来の原子力発電規模
 我が国の将来の原子力発電規模については,昭和55年11月28日の閣議において,石油代替エネルギーの供給目標として,昭和65年度において,原子力発電により原油換算7,590万キロリットル,2,920億キロワット時とすることが決定され,この目標を達成するために必要な設備容量は,5,100〜5,300万キロワットと見込まれている。
 この目標に対し,昭和56年度の電力施設計画では昭和65年度末において,原子力発電設備容量は,5,092万キロワット(自家用発電施設を除く),総発電設備容量に占める割合は21.7%と想定している。


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