第1章 原子力開発利用の新展開を迎えて
4 新長期計画の策定

 以上述べてきたように,近時の石油情勢に鑑み,原子力に対し石油代替エネルギーの中核としての期待が一層高まってきており,原子力発電についての施策を一層積極的に展開していくことが必要となっている。また,我が国の原子力の研究開発は,新たな段階を迎えつつあり,この時期に適切な政策を明示することが今後の原子力開発利用を進めていく上で重要である。更に,国際的には国際核燃料サイクル評価(INFCE)後の情勢を踏まえ,核不拡散と原子力の平和利用の両立をめざし国際協力を進めていかなければならない。
 こうした状況を踏まえ,原子力委員会は,我が国の原子力開発利用の長期計画を見直すこととし,昭和56年3月,長期計画専門部会を設置した。同専門部会は,既に設置されていた関連する専門部会の審議結果を踏まえつつ,原子力発電の開発の促進,研究開発の計画的遂行及び成果の実用化の促進,並びに国際情勢への対応に関する諸方策について新しい長期計画の取りまとめを進めているところである。
 原子力発電の開発の促進については,原子力発電の開発目標の達成に障害となっている立地問題等に対応するための方策,低レベル放射性廃棄物の処分等実施の促進方策,運用期間を終了した原子力施設の運転廃止後の措置の対策等が検討されている。また,研究計画の計画的遂行及び成果の実用化の促進については,高速増殖炉の実証炉以降の開発の進め方,新型転換炉の実証炉の評価検討結果を踏まえた今後の進め方,遠心分離法によるウラン濃縮の事業化方策,民間再処理会社による再処理事業の推進方策,高レベル放射性廃棄物の処理・処分に関する研究開発の進め方,JT-60計画の進展等を踏まえた核融合の今後の研究開発の推進方策等が検討されている。
 更に,国際情勢への対応については,INFCE後の国際情勢を踏まえ,国内保障措置の充実及び核物質防護体制の強化を含む核不拡散問題における国際協力方策が検討されている。
 原子力開発の推進により,低廉かつ安定したエネルギーを供給し,我が国社会の福祉と国民生活の向上に寄与するために,また,我が国が原子力分野において国際社会に貢献するためにも,今次策定される長期計画の意義は重要であり,原子力委員会はその策定に最大の努力を傾注していく所存である。


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