2.原子力委員会の計画及び方針等

(3)動力炉・核燃料開発事業団の動力炉開発業務に関する第3次基本計画

(昭和55年3月31日決定)
内 閣 総 理 大 臣

 動力炉・核燃料開発事業団法第25条第1項の規定に基づき,さきに定めた動力炉開発業務に関する基本方針に従い,動力炉開発業務に関する第3次基本計画を下記のとおり定める。

1. 高速増殖炉
 実験炉については,熱出力7万5千キロワットで運転を行い,原型炉の開発に必要な技術的経験を得るとともに,照射用炉心に改造し,昭和57年度に熱出力10万キロワットで臨界に至らしめ,燃料,材料等の照射施設としても利用し高速増殖炉の燃料材料の開発に必要なデータの蓄積等を行う。
 原型炉については,電気出力約30万キロワットのものを,昭和62年度頃臨界に至らせることを目途として昭和55年度から建設を進める。
 これらの運転,建設等と並行して,次の研究開発を実施し,その成果を適宜原型炉の建設等に反映せしめる。
(1) 炉物理
 日本原子力研究所(以下「原研」という。)の高速臨界実験装置を用いたプルトニウム燃料による原型炉炉心の部分モック・アップ試験等を行う。
(2) ナトリウム技術
 ナトリウム機器材料の開発に関する試験ループを用いて,材料の腐食,質量移行等に関する試験を行う。
 また,ナトリウム流動伝熱試験装置を用いてナトリウム関係機器の確性試験を行う。
 さらに,これらの試験と並行して,ナトリウム分析技術等の開発を進める。
(3) 主要機器,部品等
 原型炉用の主要機器,部品については,制御棒駆動装置等のモック・アップ試験,ナトリウム熱衝撃試験装置を用いた冷却系機器の試験,水流動試験装置を用いた原子炉容器及び冷却系機器の試験等を行う。
 また,蒸気発生器については,ナトリウム水反応試験装置及び小型蒸気発生器試験装置を用いて確性試験を行うとともに,5万キロワットの蒸気発生器試験装置を用いて耐久試験等を行う。
 さらに,これらの試験と並行して供用期間中検査装置等の開発を行う。
(4) 計測制御
 破損燃料検出システム等の開発を行うとともに,動特性解析を行う。
(5) 燃料,材料
 原型炉用のプルトニウムとウランの混合酸化物燃料について所要の試作試験を行うとともに,ナトリウム流動伝熱試験装置等を用いて流動伝熱試験を行う。また,材料強度試験室等を用いて原型炉用構造材料に関する確性試験を行う。
 「原研」の材料試験炉(以下「JMTR」という。)及び海外の高速炉等を用いて,燃料,材料の照射試験を行うとともに,照射燃料試験施設等を用いて,これらの照射後試験を行う。
 実験炉に装荷する炉心燃料については,プルトニウム燃料開発施設において製作を行い,また,原型炉に装荷する炉心燃料を製作,検査するためプルトニウム燃料製造施設及び燃料材料検査施設の設計,建設を進める。
 さらに,実験炉及び原型炉の使用済燃料を処理する試験施設の設計を進めるとともに,高レベル放射性物質研究施設等を用いて主要工程の技術開発を行う。
(6) 安全性
 ナトリウム沸騰現象の解明,配管構造物の破断試験,燃料破損機構の解明,安全防護設備の試験等原型炉の安全解析等に必要な研究及び試験を行う。

2. 新型転換炉
 原型炉については,電気出力16万5千キロワットで運転を行い,技術的諸性能の確認,安全性評価データの蓄積を行うとともに,プルトニウム富化減損ウラン燃料の利用技術を実証する。
 また,原型炉の経験及び成果を踏まえ,実証炉の調整設計を行う等,評価検討を進める。
 原型炉の運転と並行して次の研究開発を実施し,その成果を原型炉の運転及び実証炉の評価検討等に反映せしめる。
(1) 炉性能
 重水臨界実験装置及び伝熱流動試験施設を用いて原型炉あ運転及び実証炉の評価検討等に必要な炉性能に関する試験を行う。
(2) 主要機器,部品等
 供用期間中検査機器等原型炉の運転,保守に必要な装置の開発を行うとともに,部品機器試験施設を用いてシールプラグ等の耐久試験を行う。
 また,実証炉の評価検討等に必要な圧力管等の試作開発を行う。
(3) 計測制御
 冷却系配管の破断検出法等の開発を行うほか,実証炉の評価検討等に必要な計測制御技術の開発を行う。
(4) 燃料,材料
 原型炉用の燃料,材料についてはJMTR等を用いて照射試験及び照射後試験を行うとともに実証炉の評価検討等に必要な燃料集合体の試作開発を行う。
 また,原型炉に装荷する燃料のうち,ウラン燃料については,民間加工施設において製作を行い,プルトニウム富化燃料については,プルトニウム燃料開発施設において製作を行う。
(5) 安全性
 一次冷却系破断,主蒸気管破断等に関する安全性の確認実験及び安全性解析を行う。

3. 共通事項
 高速増殖炉及び新型転換炉に係る核物質管理システム等保障措置技術,廃棄物処理,安全管理技術等の研究開発を行う。

4. 本基本計画は,昭和55年度から58年度までの期間を対象とし,必要に応じ所要の修正を行うものとする。


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