第10章 原子力産業

1 原子力機器産業

 原子力機器産業は原子力エネルギーの供給を可能とする機器の供給を担うとともに,今後の新型炉開発等研究開発を担う重要な産業である。
 また,原子力機器産業は設計,製作,施工から試運転に至るまで高度の安全性,信頼性を確保しつつ,複雑かつ高度の原子力機器を製造する必要があることから,典型的な知識集約型システム産業として,また技術先端産業として,今後の我が国における産業構造の高度化を担っていくべき産業である。
 こうした産業としての特性から,原子力産業は極めて広範な技術を土台として成り立っており,必然的に資本面及び技術面において関連企業が組織化され,電気,機械を中心としつつ,化学,金属,土木等の広範な事業分野にわたる原子力機器産業グループを形成している。
 この原子力機器産業グループは,現在次の5グループにわかれている。
 軽水炉技術については,東芝,日立がゼネラルエレクトリック(GE)社から沸とう水型炉を,三菱がウエスチング・ハウス(WH)社から加圧水型炉を技術導入し,製造技術の習得に努めてきた。
 原子力発電所の主契約者について見れば,軽水炉の初期のものについては,GE,WH社が主契約者となり,国内メーカーはその下請けとして機器の製作に当たっていたが,その後,110万kW級原子炉の初期のものを除き日本のメーカーが主契約者となって建設を行うようになっている。
 原子炉機器の国産化状況について見ると,初期の40〜50%程度から最近では,90数%に達するものも現れるに至っており,国産化体制がほぼ整ってきたと言える。なお,特に重要な機器で高度の信頼性や実証性が要求され,国産化の遅れていた計測制御系,循環ポンプ,安全弁の一部,バルブ等についても国産化が進みつつある。

 このように,我が国の原子力機器産業は,これまでの建設経験によりかなりの水準に達しているが,今後とも,改良標準化や品質保証技術の向上等を進め,わが国の軽水炉技術の成熟を図っていく必要がある。
 また,(財)原子力工学試験センター等の活用によって信頼性の向上,自主技術の確立に努めるとともに,原子力発電所のシステムの大型化,複雑化に伴って,運転操作性の信頼度を一層向上すべく,原子力発電支援システムの開発に積極的に取り組んでいく必要がある。

 輸出に関しては,わが国の鉱工業の原子力関係の売上げのうち輸出を目的としたものは,昭和50年に100億円を突破したが,その後も100億円台を推移しており,わが国も特に原子炉のプラント輸出を可能とする段階に早期に到達することが望まれる。これまでの輸出形態としては,原子力発電プラントのサブコントラクターとして,圧力容器,格納容器,タービン発電機等を輸出しているが,今後はこのサブコントラクターとしての輸出を伸ばすことと同時に,経営基盤の強化,核燃料サイクル技術の確立を図り,主契約者としての輸出に本格的に取り組んでいくことが重要である。


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