第6章 新型炉の開発
2 高速増殖炉

(3)研究開発

 高速増殖炉の研究開発は,動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターのナトリウム流動伝熱試験装置,50MW蒸気発生器試験施設等の各施設を中核として実施されているほか,大型炉のための設計研究が行われている。また日米,日英,日独仏の協力が動力炉・核燃料開発事業団を当事者として行われている。
① 炉物理
 日本原子力研究所に設置されている高速臨界実験装置(FCA)を用いた原型炉炉心の部分モックアップ実験を前年度に引き続き実施しているほか,高速炉炉心核設計法の確立のためのバーンアップ計算法の開発,炉定数の作成と評価,核データの評価,大型炉特性解析等を実施している。
② ナトリウム技術
 ナトリウム中での構造材料の特性を調査するため,材料試験ループ等を用いて,質量移行試験,各種クリープ試験等を行っている。
 また,ナトリウム流動伝熱試験装置を用いて,燃料集合体を中心とした各種機器の耐久試験,確性試験を行ったほか,ナトリウム分析法の開発,ナトリウム純度管理技術の開発等を実施している。
③ 主要機器,部品
 実験炉用構造機器については,ナトリウム冷却系機器の耐久試験等を行った。原型炉用構造機器については,燃料交換機,制御棒駆動機構,1次系ポンプ等のモックアップ試験,炉体構造について水流動試験,1次収納構造物について健全性試験,中間熱交換器についてナトリウム熱衝撃試験,NaKについて流動試験を行っている。また,供用期間中検査装置,回転プラグシール構造,ナトリウム用大型弁類,熱膨張吸収装置,予熱法等の開発を行っている。
④ 計測制御
 原型炉において使用する検出器,回路系の開発を中心として,炉内及び炉外中性子検出器,破損燃料検出装置,ナトリウム流量計,ナトリウム透視器等の試験等を行っている。

⑤ 燃料・材料
 フランスの実験炉ラプソディー,原型炉フェニックス,国内のJMTR等による燃料照射を引き続き行うとともに,燃料ピン,燃料集合体等の製造技術の開発,照射燃料試験施設(AGF)等における照射後試験等を実施している。
⑥ 構造材料
 原型炉の高温構造設計解析法の開発,空気中,ナトリウム中の材料試験及び照射試験を行っている。
⑦ 安全性
 動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターの高速炉安全性試験室におけるナトリウム過渡沸とう試験等の炉内安全研究を行ったほか,1次系配管の信頼性に関する研究,耐衝撃試験,耐震構造試験,事故時の放射性物質移行試験等を実施している。また,国際共同研究である反応度事故模擬炉内試験,大規模炉内安全性試験等を実施している。
⑧ 蒸気発生器
 熱出力50MW蒸気発生器2号機による各種試験運転,メンテナンス技術実証試験等を実施している。
 またナトリウム―水反応試験では,大リーク及び小リークのナトリウム水反応試験を継続して実施するとともに,蒸気発生器安全性総合試験装置での大規模ナトリウム―水反応試験を実施している。
⑨ 再処理
 高速増殖炉燃料に対して,世界の主流を占める湿式再処理法を適用することとし,再処理試験施設の概念設計,主要工程の研究開発を行うとともに,高レベル放射性物質研究施設の建設を進めている。
⑩ 国際協力
 高速増殖炉に関する日英,日米,日独仏及び日ソ協力が順調に進展した。


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