第6章 新型炉の開発

1 新型転換炉

 新型転換炉は,減速材として中性子吸収の小さい重水を使用するため,核燃料の利用効率が高く,また,軽水炉燃料の再処理によって得られるプルトニウム等を有効に利用することができるという特徴を持つているので,高速増殖炉が実用化を見るまでの中間段階において,核燃料サイクル上有効な役割を果すものと期待されている。新型転換炉の原型炉「ふげん」は,昭和54年3月以来,動力炉・核燃料開発事業団が本格運転を行っており,昭和54年度の運転実績は発電電力量約10.5億キロワット時,設備利用率72.4%となっている。
 次の段階の実証炉の研究開発については,原子力委員会新型動力炉開発懇談会において「動力炉・核燃料開発事業団は電気事業者等の協力の下に,実証炉の詳細設計を早急に進め,かつ必要な研究開発を実施する」と指摘されており,動力炉・核燃料開発事業団において実証炉の調整設計及びこれに関連する研究開発が進められている。
 更に原子力委員会は昭和54年8月10日「原子炉開発の基本路線における中間炉について」の決定の中で,新型転換炉開発については,これを精力的に進める必要があり,早急にチェックアンドレビューにとりかかるものとするとの考え方を示した。これを受けて,新型転換炉に関する技術的,経済的評価等を行い,新型転換炉実証炉の開発に関する今後の施策の確立に資するものとして,昭和55年1月には「新型転換炉実証炉評価検討専門部会」を設置し,核燃料サイクル,経済性,安全性,運転信頼性,運転保守性等について審議を進めている。原子力委員会としては,この審議結果を踏まえ,新型転換炉実証炉について総合的な評価検討を行い,昭和50年代半ばまでにその建設を決定することとしている。なお,電気事業者と動力炉・核燃料開発事業団とのATR合同委員会においては,原型炉の運転実績,実証炉の設計等について検討し,電気事業者の意見を実証炉設計に反映させる努力が続けられている。


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