第4章 国際関係活動

1 国際関係活動の概要

 原子力における国際関係活動には,大別して3つの側面がある。
 第一は,核物質,役務,技術等の移転を直接目的とするもの,第二は,核不拡散の保証のためのもの,第三は,研究協力,情報交換等の相互協力である。第一と第二とは,従来から表裏一体となっているものであり,一般には「原子力平和利用協力協定(いわゆる原子力協定)」に基づき進められる。同協定は核物質,役務,技術等の移転に途を開くものであるが,同時に保障措置上の義務及び核物質の取扱いに関する幾つかの義務を政府に課するものであり,かかる原子力協定は国会で承認を必要とする条約という性格を持っている。
 海外にウラン資源,濃縮役務を頼り,また,当初技術導入により原子力開発を始めた我が国は,上記の国際関係を早くから有しており,それによりウラン鉱石の入手(日加原子力協定,日豪原子力協定),ウラン濃縮役務の確保及び軽水炉導入(日米原子力協定),動力炉導入,天然ウランの入手及び再処理役務の確保(日英原子力協定),ウラン鉱入手,濃縮及び再処理役務の確保(日仏原子力協定)を図っている。

 上述の各原子力協定とも,保障措置の実施を義務付けており,  「保障措置の国際原子力機関への移管協定」により,各協定毎に,保障措置の国際原子力機関による実施を取り決めていたが,我が国が核不拡散条約を批准(昭和51年6月)し,その実施のための「保障措置協定」を国際原子力機関との間で締結(当該協定は昭和52年12月に発効)した後は,その枠組での保障措置が実施されることとなった。また,各協定とも,核物質等の移転に際してそれが平和目的のみに使われること,移転が政府の承認した者の間のみで行われること,第三国への再移転には原子力資材供給国の制約が課せられること等についての規定を含んでいる。
 近年の核不拡散の強化という国際的な傾向の中で,この第二の側面を強化しようとの動きが活発となっているが,二国間原子力協定の中には,日米,日豪の原子力協定のようにこの線に沿った改正が行われようとしているものもあり,他方日加原子力協定は既に改正され,発効している。
 国際関係の第三の側面(研究協力,情報交換)は原子力協定のみならず,科学技術協力協定(西独,ソ連,米国),交換公文,政府間協議等に基づいても行われるが,近年,我が国の研究開発水準の向上に伴い積極的かつ対等な相互協力の傾向が顕著であるとともに,開発途上国からの技術協力の要請が一段と高まっている。

 この場合,相手国としては,同じ軽水炉路線をとる米国,西ドイツ及びフランスとの間で,共通の関心事である安全性研究協力が進められているのをはじめ,核融合については,米国及びソ連と,高速増殖炉については,米国,英国,フランス,西ドイツ及びソ連と,また,高温ガス炉については,米国及び西ドイツというように,分野毎に適宜協力相手国と協力形態とを選ぶことにより,最適な成果をあげることを目指している。
 以上は,二国間協力を中心としたものであるが,他方では多国間での協力及び国際機関における協力がある。
 国際機関のうち,国際原子力機関(IAEA)は,原子力技術の開発促進と同時に,核不拡散のための保障措置の実施という両面を持つが,経済協力開発機構原子力機関(OECD-NEA)及び同国際エネルギー機関(OECD一IEA)は,原子力開発利用面での政策をはじめ,新技術の開発と安全性の確保に関する意見交換等を行っている。
 以下,各々の国際関係活動における主要な動きを述べる。


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