第3章 核燃料サイクル

5 核燃料物質の輸送

 海外から我が国への核燃料物質の輸送としては,発電所用低濃縮ウラン燃料の場合,大部分は海外で濃縮された二酸化ウラン粉末又はシリンダ一入りの六フツ化ウランの形態で輸入されている。また,研究開発用若しくは研究炉用の高濃縮ウラン,プルトニウムの場合は,それぞれ金属ウラン,プルトニウム酸化物として輸入されている。
 我が国から外国への輸送としては,現在,英国等に委託して再処理を行っているため,使用済燃料は直接発電所サイトから船舶で海外へ輸送している。昭和54年度及び昭和55年度(昭和55年10月まで)は,東京電力(株)の福島原子力発電所及び日本原子力発電(株)の敦賀原子力発電所の使用済燃料が英国核燃料公社(BNFL)へ,また関西電力(株)の高浜原子力発電所及び美浜原子力発電所の使用済燃料がフランス核燃料会社(COGEMA)へ輸送された。
 国内では,動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設への輸送として,東京電力(株),関西電力(株),中部電力(株),中国電力(株)及び九州電力(株)の5電力会社の各原子力発電所から使用済燃料専用運搬船「日の浦丸」による海上輸送がそれぞれ実施された。
 今後全国各地の原子力発電所が稼働し,海外再処理委託量が増加するとともに国内において再処理施設の本格操業が開始される見込みであるため,使用済燃料等の核燃料物質の輸送は,今後とも拡大することが予想される。このような輸送の本格化に対応するため,既に民間の輸送サービス機関が事業を開始する一方,軽水炉使用済燃料用輸送容器の国産化が行われている。
 核燃料物質等の輸送の規制については,原子炉等規制法,船舶安全法,航空法及びこれらに基づく総理府令,運輸省令等により行われているところであるが,昭和53年6月に成立した原子力基本法等の一部改正により,原子力施設内外における核燃料物質等の輸送の規制に関する責任分担が明確にされるとともに,既に船舶輸送及び航空機輸送に対して実施されている確認行為が陸上輸送にも適用され,輸送に際し,法令で定める技術上の基準に適合することについて行政庁の確認を受けることとなった。
 一方原子力安全委員会放射性物質安全輸送専門部会においては,昭和54年3月,安全基準分科会が設置され,現在,IAEA放射性物質安全輸送規則の1983年改訂のための検討及び核燃料物質陸上輸送の安全評価のための調査審議を行っている。


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