第2章 安全の確保,安全の実証及び環境保全のための調査研究等
3 環境放射能調査

(2)原子力施設周辺の放射能調査研究

① 原子力施設周辺の環境放射線モニタリング
 原子力発電所等の原子力施設周辺における環境モニタリングについては,周辺公衆の受ける線量が,線量限度を十分下回っていることを確認すること,環境における放射性物質の蓄積傾向を把握すること等を目的として原子炉設置者等が行うこととされており,具体的な監視は,内閣総理大臣の認可を受けて設置者が定める保安規定に基づいて実施している。
 国においては,科学技術庁が水戸原子力事務所及び福井県敦賀市所在の福井原子力連絡調整官事務所を通じ,放射能調査を実施した。
 一方,府県については,現在原子力施設が稼働又は建設に着手している各地区において,府県の関係機関が独自に又は府県及び設置者からなる協議会等を組織して,放射能調査の実施・調査結果の評価等を行った。
 また,地元府県が行う放射線監視については,第72回国会で成立した電源開発促進対策特別会計法に基づき,昭和49年度より放射線監視交付金を交付してきているが,昭和55年度においては,緊急時対策としての設備の充実を行った。
 このように原子力施設周辺の地域住民の健康と安全を確認するため,放射線モニタリングの実施体制が整備されてきたが,同時に放射線監視の結果を公正に評価する中央評価機構の必要性が指摘されており,原子力委員会は昭和49年12月24日に「環境放射線モニタリング中央評価専門部会」を設置した。同部会は,昭和53年1月「環境放射線モニタリングに関する指針」を作成し,原子力委員会もこれを採択した。これは原子力施設敷地境界の外側において,主として地方公共団体が実施する環境放射線モニタリングの技術的水準の向上を図るとともに,その斉一化を図るため,環境放射線モニタリングの計画の立案,実施及び結果の評価について基本的方法を示したものである。
 これらについては,原子力安全委員会の新設に伴い,原子力安全委員会の下に設置された新しい「環境放射線モニタリング中央評価専門部会」によって引き続き検討が進められている。
 また,昭和50年度より,電源開発促進対策特別会計により国及び府県の委託を受けた民間分析機関が分析,精度の向上を図るため,相互に放射能分析を行いその結果を比較する放射能分析確認調査が開始され,更に昭和55年度からは,熱螢光線量計(TLD)を用いた相互比較が追加された。一方,昭和52年度からは府県のデータを一括して収集整理するデータ収集整理事業が(財)日本分析センターにおいて開始されている。
② 原子力施設周辺環境に関する調査研究
 原子力施設が周辺環境に対して与える影響の把握,その影響の軽減方法等に関する研究が,国立試験研究機関,都道府県衛生研究所等で行われた。
 水産庁東海区水産研究所は,昭和44年度から「放射性元素蓄積の指標生物に関する研究」を福井県水産試験場の協力を得て実施してきた。
 また,放射線医学総合研究所においては,「原子力施設周辺のレベル調査」を引き続き実施した。
 さらに,再処理施設の稼働に伴う放射性物質の放出が周辺環境に与える影響を把握するため,従来の環境における放射能水準等の基準的調査に加え厚生省国立公衆衛生院においては,「食物汚染RIの生体内代謝被曝線量評価に関する研究」,水産庁において「再処理施設排水の分布拡散に関する調査研究」等,気象研究所においては,「原子力施設に由来する放射性気体の広域分布に関する調査研究」,海上保安庁においては,「再処理施設稼働に伴う周辺海域における放射能調査」をそれぞれ実施した。


目次へ          第2章 第3節(3)へ