第1章 原子力発電

3 米国スリー・マイル・アイランド(TMI)原子力発電所事故の教訓の反映

 昭和54年3月28日,米国スリー・マイル・アイランド(TMI)原子力発電所(ペンシルバニア州)において,放射性物質が外部環境に放出されるという事故が発生した。
 原子力安全委員会は,事故発生直後の昭和54年3月30日,①国内の原子力発電所の管理体制の再点検,②事故の経験を生かすために必要な事項の検討,③情報をより的確に把握するための専門家の派遣等を内容とする委員長談話を発表し,また,加圧水型原子力発電所については加圧器水位計に関連するECCSの問題について検討を行った。
 更に,この事故に関し,昭和54年4月「米国原子力発電所事故調査特別委員会」が設置され,事故の調査及び我が国の安全確保対策に反映させるべき事項の検討が行われた結果,9月13日にとりまとめられた第2次報告書において,我が国の原子力安全確保に反映させるべき事項(52項目)の指摘が行われた。
 この52項目の指摘事項については,原子炉安全基準専門部会,原子炉安全専門審査会,原子力発電所等周辺防災対策専門部会,原子力施設等安全研究専門部会及び環境放射能安全研究専門部会において検討が加えられた結果,昭和55年6月までに,原子力安全委員会に対して報告が行われた。これらの成果についてはその後の関係省庁による安全審査及び原子力安全委員会によるダブルチェックに反映されている。
 なお,昭和54年11月26日,この事故に関する学術的な論議を行うため,原子力安全委員会及び日本学術会議の共催により学術シンポジウムが開催された。学術シンポジウムにおける論議の概要は,昭和55年6月,報告書としてとりまとめられ,公刊されている。
 また,この事故の教訓を踏まえ,昭和55年6月30日,原子力安全委員会は「原子力発電所等周辺の防災対策について」決定を行い,内閣総理大臣に報告した。この決定は中央防災会議会長から都道府県防災会議会長あて通知され,関係地方公共団体においては,これを踏まえて地域防災計画の見直しを含め,原子力防災対策のより一層の充実整備を図ることとしている。これに関し,国は緊急時対策の充実,地域防災計画策定の指導等を行っている。


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