第3章 原子力をめぐる国際動向と我が国の立場

5 研究開発における国際協力等

 原子力の研究開発利用は,個々の研究開発プロジェクトが大規模で,膨大な研究開発資金を必要とするばかりでなく,基礎的研究段階から実用化まで長期間を要し,一国で行うには負担が過大となるため,これを各国で分担し,効率的な研究開発を進めるという観点から,近年,国際的な研究開発協力が各国における重要な課題となってきた。このような国際的動向や我が国の研究開発水準の向上と相まって,我が国における国際研究開発協力は,最近,飛躍的な発展を遂げている。
 我が国としては,原子力研究開発利用における自主性を確保する一方,適宜協力相手国と協力形態とを選びつつ国際協力を積極的に推進することとしている。
 我が国が行っている国際協力には安全研究,新型炉の開発,核融合の研究等がある。
 安全研究については,軽水炉について日本と同様に軽水炉路線をとる米国,西独,仏国との間で協力が進められており,また,高速増殖炉及び高温ガス炉について米国との間で協力が行われている。特に軽水炉については,従来から冷却材喪失事故や反応度事故に関する研究等幅広い分野での協力が活発に行われてきたが,昭和55年4月には新たに日米独三国間の大型冠水試験研究協力が開始された。また,昭和54年5月及び6月の日米首脳会談において原子力の安全研究に関する日米協力の拡大・強化についての合意が得られ,その後事務レベルの専門家会合等により,協力の具体化のための検討が進められている。この他,原子力発電の安全に関し,昭和55年10月IAEAは,これまでの原子力発電の約20年に及ぶ経験と米国TMI原子力発電所事故の教訓を踏まえ,今後の安全性の一層の向上の方向を探ることを趣旨として,原子力発電所の安全問題に関する国際会議をストックホルムにおいて開催したが,我が国からも原子力安全委員を始め,関係省庁職員,専門家,電気事業者,メーカーの関係者などがこの会議に参加した。
 新型炉については,重水炉についてカナダと,高速増殖炉について米国,英国,西独,仏国及びソ連と,また高温ガス炉については西独との間で協力を行っている。
 核融合の研究については米国,ソ連等との間で協力を行っている。特に,日米間においては,昭和54年5月に締結された日米エネルギー等研究開発協力協定において,核融合は協力の当初の重点分野とされ,米国のトカマク型プラズマ試験装置ダブレットIIIを用いた共同研究,交流計画等の協力を実施することとなった。昭和54年8月には,日米核融合調整委員会及びダブレットIII計画に関する交換公文がそれぞれかわされ,日米核融合調整委員会が設置されるとともに,ダブレットIIIを用いた共同研究が開始された。その後,2回の日米核融合調整委員会が開催され,協力分野全般についての具体的計画が協議され,共同研究,研究者の相互派遣等が積極的に進められている。
 また,我が国は国際原子力機関(IAEA),経済協力開発機構(OECD)等の主要メンバー国として,これら国際機関との協力を活発に進めており,原子力安全,放射線利用,核融合等の研究開発プロジェクトに参加している。
 さらに,最近,原子力先進国としての我が国に対し,開発途上国における原子力技術水準の向上のため一層の貢献をすることが求められており),今後,ふさわしい協力分野,協力形態等について核不拡散の観点をも踏まえた総合的な検討を早急に行い,協力を軌道に乗せていく必要がある。このような開発途上国に対する協力の一環として,我が国は昭和53年8月に,IAEAの「原子力科学技術に関する研究・開発及び訓練のための地域協力協定(RCA)」に加盟した。同協定のもとでは,アジア・太平洋地域の開発途上国を対象として,現在,農業及び工業分野へのラジオアイソトープ・放射線の利用を中心に協力活動が活発に行われている。我が国も開発途上国における喫緊の課題である食糧・工業・医療問題の解決に資するため,資金の拠出,研修員の受入,専門家の派遣,ワークショップの開催等を通じて,本RCA活動に積極的な協力を行っている。


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