第3章 原子力をめぐる国際動向と我が国の立場

4 保障措置と核物質防護

 〔保障措置〕
 保障措置をめぐる国際動向について述べると,前述のとおりINFCEに於て原子力の平和利用と核不拡散の両立をはかるための手段として保障措置が最も有効であるとされるとともにまた,NPT第2回再検討会議に於てもNPT体制を支えるものとしてIAEAの保障措置制度が評価された。
 NPT批准に伴うIAEAとの間の保障措置協定において,我が国は独自の国内保障措置制度を確立することとなっており,今後とも自主的に保障措置技術の改良に努めるなど国内保障措置の充実・強化に積極的に努力していくこととしている。特に保障措置技術の改良については,保障措置の改良をめぐる上述のような国際的動向に主体的に対処するうえでも重要であり,計量管理技術,封印監視技術及びそれらを合わせたより高度な保障措置,トータルシステム技術の開発を我が国独自で,あるいはIAEAの諸作業に積極的に協力するなど国際協力でも進めてきているところである。例えば,昭和52年9月の日米共同声明の趣旨にのっとり,我が国は米国,フランス及びIAEAと共同して動力炉・核燃料開発事業団東海再処理施設において再処理に関する改良保障措置の研究開発を実施してきた。
 なお,懸案であった動力炉・核燃料開発事業団ウラン濃縮パイロットプラントへのIAEAの特定査察については,トロイカ(英国,西独及びオランダ)の濃縮施設と同様,機微な技術を含む工程への立入りを行わない方式で実施することで,我が国とIAEAとの間で合意が成立し,昭和55年7月,第1回特定査察が行われた。また,遠心分離法ウラン濃縮施設に関する保障措置技術開発についても,効果的かつ効率的な保障措置の適用を目指して,日本,米国,トロイカ,豪州,IAEA及びユーラトムによる国際協力プロジェクトが昭和55年11月7日に発足し,我が国はこれに積極的に参加していくこととしている。

 〔核物質防護〕
 原子力開発利用の進展に伴い,核物質が各施設において大量に扱われるようになったため,これを盗取等により入手し平和目的以外に利用することを防止するいわゆる核物質防護が極めて重要となってきた。国際的には,IAEAの場で2年間にわたって検討されてきた輸送面における国際的な連携システムの確立を目的とする核物質防護条約草案が昭和54年10月に採択され,昭和55年3月署名のために開放されており,昭和55年9月現在,27カ国及びECが署名を行っている。
 従来,我が国は核物質防護の重要性に鑑み,IAEAの勧告及びロンドンガイドラインの基準を十分満すような対策を講じてきたところである。
 また,原子力委員会においては,昭和51年4月原子力委員会の下に核物質防護専門部会を設置し,核物質防護のあり方について検討を行ってきたが同部会は,昭和55年6月に核物質防護体制整備のための検討結果を報告書としてとりまとめた。


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