第8章 核融合,原子力船及び高温ガス炉の研究開発
3.多目的高温ガス炉

 多目的高温ガス炉の研究開発は,日本原子力研究所で昭和44年から開始され,基礎的な研究が積み重ねられてきた結果,現在昭和51年度には概念設計が行われ,昭和60年代前半の運転を目途とする実験炉の建設計画が作成されるまでになった。
 一方,通商産業省工業技術院においては,昭和48年度から多目的高温ガス炉との結合を目指して,「高温還元ガス利用による直接製鉄技術の研究開発」が「大型プロジェクト」として開始されるなど多目的高温ガス炉の研究開発に対する要請は強まっている。
 原子力委員会では,原子力研究開発利用長期計画(昭和53年9月)において,第一段階として,発生高温ガスの温度1,000°Cを目標とする実験炉と昭和60年代前半の運転を目途に建設することとした。
 これを踏まえ,日本原子力研究所では,昭和53年度には,材料試験炉(JMTR)に接続した高温ガスループ(OGL-1)の運転,炉心耐震試験,高温二重配管試験,高温耐熱材料,被覆粒子燃料,黒鉛材料,伝熱流動等に関する研究を進めている。更に大型構造機器実証試験ループ(HENDEL)の設計を終え製作を開始している。
 また,従来から進めて来た実験炉設計の成果を踏まえて,実験炉の機能を発揮し,かつ安全性を確保,保持することができる全プラントシステムの総合設計を実施している。他方,前述の大型プロジェクトにおいては昭和53年5月に主要開発要素の1つである水蒸気改良装置実験プラントが9月には高温ヘリウムテストループが,11月にはピッチ・ガス化装置実験プラントがそれぞれ運転に入る等,高温ガス炉の核熱利用技術は着実に進みつつある。
 国内におけるこれらの研究開発活動のほか,昭和51年12月から国際原子力機関(IAEA)においても高温ガス炉の研究協力が取り上げられ,昭和52年12月には第1回技術検討委員会が開催された。更に,米国及び西ドイツとの研究協力も積極的に進められている。
 日米間の国際協力については,昭和50年10月,軽水炉安全性情報交換取決め(昭和48年3月)に,「高温ガス炉の安全性研究」の項目が追加され,以後これに基づいて諸般の情報交換が軌道にのることとなった。
 日独間の協力については,昭和49年10月,日独科学技術協力協定が締結され,昭和52年4月同協定に基づく第3回合同委員会で,「高温ガス炉に関するパネル」を設置することが決定された。昭和52年5月及び53年6月に開催されたパネルで協力形態,テーマ等が協議され,協定締結について合意し,昭和54年2月,原研―ユーリッヒ研究所との間で研究協力協定が締結された。なお,昭和54年10月及び11月に耐熱合金と大型機器に関する専門家会合が開催され,相互に関心のある研究項目が摘出された。


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