第7章 新型動力炉の開発
2.新型転換炉

 新型転換炉は,減速材として中性子吸収の小さい重水を使用するため,核燃料の利用効率が高く,また,軽水炉燃料の再処理によつて得られるプルトニウムを有効に利用することができるという特徴を持つているので,高速増殖炉が実用化を見るまでの中間段において,核燃料サイクル上有効な役割を果すものと期待されている。新型転換炉の原型炉「ふげん」は,既に動力炉・核燃料開発事業団が本格運転を開始させている。
 次の段階の実証炉の研究開発については,昭和54年3月の原子力委員会新型動力炉開発懇談会において「動力炉・核燃料開発事業団は電気事業者等の協力の下に,実証炉の詳細設計を早急に進め,かつ必要な研究開発を実証する」と指摘されており,動力炉・核燃料開発事業団において進められている。
 更に,同懇談会の報告を受けた原子力委員会は昭和54年8月の委員会決定において実証炉建設についてのチェック・アンド・レビューを早急に開始することとし,前述のとおりこれに必要な準備が進められている。
 なお,昭和54年2月には電気事業者と動力炉・核燃料開発事業団との間でATR合同委員会が設置され,原型炉の運転実績,実証炉の設計等について検討し,電気事業者の意見を実証炉設計に反映させる努力が続けられている。

(1)原型炉の建設,運転

 原型炉「ふげん」は,昭和45年12月に着工し,機器据付けを昭和52年6月に終了し,昭和53年3月より起動試験を開始した。同年3月20日燃料集合体22体により最小臨界に達し,同年7月に電力系統へ初併入を行い送電を開始した。昭和54年3月20日に起動試験を完了し,定格出力運転に入り,その後順調に運転を続けている。

(2)研究開発

 新型転換炉の研究開発は機器,材料の先行確認試験及び運転,保守に系る研究開発を主体に進めており,その成果は,原型炉の起動試験,運転管理等に効果的に反映されている。
 また,動力炉・核燃料開発事業団と,カナダ及び英国との重水炉に関する協力が続けられた。

①設計研究
構造設計研究,設計コードの改良を行うとともに,実証炉については概念設計を完了し,調整設計を進めている。
②炉物理
動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センター重水臨界実験装置(DCA)を用いて,原型炉の運転のための炉物理実験を行うとともに,実証炉炉心の評価に必要な炉物理実験を進めた。
③伝熱流動
動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターの大型熱ループ(HTL)を用いて原型炉運転のため伝熱流動試験を行うとともに大型炉の燃料集合体の評価に必要な伝熱流動研究を行った。
④ 主要部品,機器
圧力管と異種金属との接合部,圧力管モニタリング装置,運転保守設備の試作開発を行っているほか,動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターのコンポーネント・テストループ(CTL)における圧力管,燃料集合体,シールプラグ等の耐久試験を継続して実施した。
⑤ 燃料,材料
燃料の照射試験を日本原子力研究所の材料試験炉(JMTR)で引き続き実施し,一部照射の終了したものについて照射後試験及び解析を実施し,また実機特殊燃料集合体の製作,圧力管材の照射試験,試験検査等を実施した。
⑥安全性
動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターの安全性試験施設において,入口管破断試験,再冠水試験及び破断検出法の試験を実施したほか,安全性解析コードの改良整備,供用期間中検査装置の試作開発,トリチウム除去試験等を実施した。
⑦ プラント特性試験
原型炉の熱出力分布の詳細解析を行った。


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