第６章 保障措置及び核物質防護
２．核兵器の不拡散に関する条約(NPT)に基づく保障措置
NPT条約は,核兵器国をこれ以上増やさないことによつて,核戦争の起こる危険性を少なくすることを目的として,昭和45年3月に発効した。
その主な内容は,次の3項目である。
① 核兵器国は,核兵器を他国に移譲せず,また,その製造について非核兵器国を援助しないこと。
② 非核兵器国は,核兵器の受領,製造をせず,製造のための援助を受けないこと。
③ 非核兵器国は,国際原子力機関と保障措置協定を締結し,国内の平和的な原子力活動に係るすべての核物質について保障措置を受け入れること。
昭和54年8月末現在,我が国を含め110カ国が加盟し,締約国となっている。NPTに署名したが,まだ批准していない国は,エジプト,トルコ等7カ国である。また,主なNPT未署名国は,フランス,中華人民共和国,インド,ブラジル,イスラエル,スペイン,南アフリカ共和国,アルゼンチン,パキスタン等である。
NPTに基づく保障措置と従来の二国間原子力協定に基づく保障措置との主な相違点は次のとおりである。
① NPT下では各国とも核物質管理制度(国内保障措置制度)を制定,維持することが義務付けられ,国際原子力機関はこの制度の結果を検証する方法で査際を実施する。
② 核物質の収支区域という概念を基礎に,定量的な核物質計量管理システムを導入し,査察の合理化を図り,査察による立入個所及び査察業務量を限定する。
③ 保障措置の対象となるものは,従来は二国間協定に基づき移転されたもののみであったが,NPT下では非核兵器国の平和的な原子力活動に利用されるすべての核物質が含まれる。