第4章 核燃料サイクル
5.核燃料物質の輸送

海外から我が国への核燃料物質の輸送としては,発電所用低濃縮ウラン燃料の場合,完成燃料体の形で輸入されるものは極めて少なく,大部分は二酸化ウラン粉末又はシリンダ一入りの六フッ化ウランの形態で輸入されている。また,研究開発用若しくは研究炉用の高濃縮ウラン,プルトニウムの場合は,それぞれ金属ウラン,プルトニウム酸化物として輸入されている。
 我が国から外国への輸送としては,現在,英国等に委託して再処理を行っているため,使用済燃料は直接発電所サイトから船舶で海外へ輸送している。昭和52年度は,日本原子力発電の東海炉及び敦賀炉の使用済燃料が英国燃料公社(BNFL)へ,また日本原子力研究所の研究炉の使用済燃料が米国へ輸送された。国内では動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設のホット実験の開始に伴い,日本原子力研究所動力試験炉(JPDR)の使用済燃料の陸上輸送が,また,東京電力及び関西電力からは使用済燃料専用運搬船「日の浦丸」による海上輸送がそれぞれ実施された。
 今後全国各地の原子力発電所が稼働し,海外再処理委託量が増加するとともに国内において再処理施設の本格操業が開始される見込みであるため,使用済燃料等の核燃料物質の輸送は,今後とも拡大することが予想される。昭和52年度は民間においてこのような輸送の本格化に対処するため,輸送サービス機関が既に事業を開始しており,また軽水炉用使用済輸送容器の国産化が行われている。


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