第2章 安全の確保
3.核燃料施設等の安全確保

 核原料物質及び核燃料物質の使用,核燃料の加工,使用済燃料の再処理,核燃料物質の輸送等いわゆる核燃料サイクルについては,安全の確保及び環境の保全を重視した規制が行われている。

(1)再処理施設の安全確保

 動力炉・核燃料開発事業団は,昭和52年7月,東海再処理施設に使用済燃料を搬入し,ホット試験(実際の使用済燃料を用いた再処理施設の試運転)を開始した。
 これに先立って,原子力委員会は,再処理施設からの低レベル廃液の海への放出に係る詳細な審査及び再処理施設のホット試験計画の安全性に関する審査を行い,昭和52年5月,十分安全と認める旨,内閣総理大臣に答申した。
 これを受けて,動力炉・核燃料開発事業団は,日本原子力研究所の動力試験炉燃料を用いた試験,沸とう水型軽水炉燃料を用いた試験,加圧水型軽水炉燃料を用いた試験と段階を追い,安全性を確認しながらホット試験を実施した。引き続く総合試験の開始直後,昭和53年8月の酸回収蒸発缶の故障により一年余り試験を中断したが,所要の改善装置を施し,昭和54年11月,総合試験を再開した。

(2)核燃料物質の使用及び加工事業の安全確保

 核燃料物質を使用しようとする者又は加工の事業を行おうとする者に対しては,原子炉等規制法に基づき,安全性を重視した規制が行われている。
 昭和53年度における核燃料物質の使用については,新規の使用許可が1件,使用の変更の許可が62件,新規の保安規定の認可が1件,保安規定の変更の認可が9件,施設検査が23件それぞれ行われた。
 また,核燃料物質の加工の事業については,新規の事業の許可が1件,事業の変更の許可が3件,設計及び工事の方法の認可が6件,保安規定の変更の認可が2件,施設検査が11件それぞれ行われた。
 なお,昭和53年度中に使用の廃止が2件あったため,昭和53年度末現在で,許可を受けている使用事業所は153,加工事業所は5となった。

(3)核燃料物質の輸送の安全確保

 核燃料物質の輸送については,原子炉等規制法,船舶安全法,航空法並びにこれらに基づく総理府令,運輸省令等により規制が行われている。このうち,特定の核燃料輸送物の陸上輸送については,昭和53年6月に成立した原子炉等規制法の改正を含む原子力基本法等の一部改正法により,施設内外の輸送の規制が明確に分担化されるとともに,既に実施されている船舶及び航空機輸送における確認行為が陸上輸送にも適用され核燃料物質の輸送に関する安全規制が一層強化された。
 科学技術庁においては,専門家から成る輸送物安全技術顧問会から技術的助言を求めながら核燃料輸送物の設計審査を進めており,昭和53年度には23件の審査を完了した。
 なお,旧原子力委員会の核燃料安全専門審査会は,我が国における使用済燃料の海上輸送に係る安全性について調査審議し,昭和53年9月,原子力委員会に報告した。


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