第2章 安全の確保
1.米国スリー・マイル・アイランド原子力発電所事故と我が国の対応

 昭和54年3月28日,米国スリー・マイル・アイランド原子力発電所(ペンシルバニア州)において,2次給水系の故障に端を発し,一部設備の不良,機器の故障,運転員の誤操作などが重なって,放射性物質が外部環境に異常に放出されるという事故が発生した。
 原子力安全委員会は,事故発生直後の3月30日,①我が国の原子力発電所の安全確保に万全を期すため,国内の原子力発電所の管理体制の再点検を行うこと,②事故の経験を生かすために必要な検討を進めること,③情報をより的確に把握するため専門家を米国に派遣すること等を内容とする委員長談話を発表した。これを受けて科学技術庁及び通商産業省は,電力会社等の原子炉設置者に対し,原子炉施設の管理体制について総合的な再点検を実施するよう指示した。
 また,加圧水型原子力発電所については加圧器水位計に関連するECCSの問題について検討した。
 また,同委員会は,今回の事故に関し,「米国原子力発電所事故調査特別委員会」を設置し,事故の調査及び我が国の安全確保対策に反映させるべき事項の検討を行うこととした。同特別委員会は,5月中旬までに得られた情報を基に,事故の事実関係を中心とした第1次報告書を5月28日に発表した。
 更に9月13日には,その時点までの調査審議の内容を第2次報告書としてまとめた。この報告書で示された点については,今後我が国の安全確保に十分反映させることとしている。
 また今回の事故において,妊婦及び就学前の児童の避難に関する勧告がなされたことから,我が国においても従来より災害対策基本法に基づき実施されることになっている防災対策の一層の充実整備を図る必要があるとの認識が高まってきた。このため,政府においては内閣総理大臣の指示に基づき,関係各省が協議して現行防災対策の再点検作業を進め,7月12日に,中央防災会議において緊急時連絡体制,技術助言体制,関係者の動員体制等の整備を内容とする「当面とるべき措置」を取りまとめた。更に原子力発電所等に係る防災対策特有の専門的・技術的事項については,原子力安全委員会において審議を行っており,この結果を,今後各機関の防災対策に生かしていくこととしている。
 また,昭和54年11月26日,この事故に関する学術的な論議を行うため,原子力安全委員会及び日本学術会議の共催により学術シンポジウムが開催された。


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