第3章 1980年代への展望と今後の課題
3.INFCE後の国際情勢への対応

 過去2年余にわたるINFCE作業の結論は,再処理及びそれによって得られるプルトニウムの利用を前提とした原子力平和利用を推進する必要があるとする我が国の基本的立場に影響を与えるものにはならない見通しである。
 しかしながら,昭和52年10月のINFCE設立総会の最終コミュニケで述べられているように,INFCEは交渉の場ではなく,核不拡散強化と原子力平和利用の両立のための方途の研究をめざした技術的,分析的研究の場であり,また,参加国政府はINFCEの結果をそれぞれの国の原子力政策の立案や関連する国際的な討議に際して利用しうるが,必ずしもこれに拘束されるものではない。
 これに対し,INFCE終了後,その結果を踏まえて行うこととなっている二国間原子力協力協定改訂交渉や東海再処理施設の運転に関する日米交渉等の二国間協議,国際プルトニウム貯蔵制度策定等のための多数国間協議等の協議結果いかんによっては,我が国の自主的な原子力平和利用活動の遂行に対し国際約束等の形で不都合な制約が課されないとも限らないことに留意する必要がある。したがって,これらのINFCE後の各種協議等に対しては,核拡散防止のための国際協力にはできる限り積極的に貢献するとの基本姿勢は堅持しつつも,我が国独自の国益を十分踏まえ,慎重かつ適切な対処が要請される。
 そのためには,まず前節で述べたように,高速増殖炉,新型転換炉,再処理,ウラン濃縮等の研究開発成果の実用化を目的とする諸施策を更に積極的に進め,また我が国の将来にわたる原子力発電規模の見通しをより具体化する等,確固たる国内基盤を背景として我が国の立場を強く主張し,国際的にも原子力研究開発利用先進国としての地歩を固める必要がある。
 また,かかる我が国の立場を主張するに当たっては,保障措置,核物質防護,機微な技術の移転管理等,所要の国内対応策を更に充実する等,国際協調の観点も踏まえつつ核拡散防止のための一層の努力を続ける必要がある。


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