第2章 原子力研究開発利用の進展
7.原子力産業

 近年の原子力研究開発利用の進展に伴い,国内における昭和53年度の原子力産業分野の鉱工業売上げ高総額が5,800億円余に達する等,着実な事業規模の成長がみられる。
 しかしながら,一部の企業でようやく売上げ高が支出高を上回る傾向をみせてはきているものの,受注が安定しないということもあって事業収支は依然として不安定であり,また累積赤字解消の見通しがたたない企業が多い。
 一方,技術面についてみれば,最近建設された軽水炉では国産化率が95%に達するものもあり,また近年進めてきた軽水炉の改良・標準化等の努力の成果もあって,今後着工が予定されるものにはついて,原子炉プラント全体としてのシステム設計についても相当の能力を持つに至っているが,海外への技術依存から完全には脱しきれていないのが現状である。
 原子力関係機器についても,原子炉圧力容器,蒸気発生器,原子力材料,発変電設備等,主要部品を中心に伸びを示してはいるものの,総合プラントとしての輸出実績はなく,昭和53年度の輸出額において前述の原子力産業分野における鉱工業売上げ高総額の4%強にすぎない。海外における原子力発電所建設のテンポが鈍化していることを考慮すれば,輸出の急激な伸びは予想し難いが,次第に技術力を蓄積し,国際競争力をつけてきた我が国の原子力産業界としては一層の企業努力を続けることにより将来の輸出産業として発展することが期待される。


目次へ          第3章へ