第2章 原子力研究開発利用の進展
4.新型動力炉の開発

〔炉型選択〕
 新型動力炉の開発は,従来から我が国の原子力開発の中で最も重要な課題のひとつであり,その進展に応じ逐次検討を行ってきたところであるが,近年において,核燃料サイクルをめぐる国際環境の変化,新型転換炉に関する研究開発,CANDU炉に関する調査の進展等がみられた。
 このため,原子力委員会は,高速増殖炉の本格的実用化時期までの過程における中間炉として,現在我が国が自主開発中の新型転換炉と昭和51年の新型動力炉開発専門部会で論ぜられたCANDU炉のあり方について審議することとし,両炉について核燃料サイクル上の評価,技術的問題,経済性の見通し等について検討させるために昭和53年4月に新型動力炉開発懇談会を設置した。
 同懇談会における審議結果は,昭和54年3月,新型動力炉開発懇談会報告書として取りまとめられたが,原子力委員会としても独自に関係行政機関,関係機関及び関係者から意見を聴取するなど幅広い意見を基に慎重な審議を行った。
 このような審議を踏まえ,昭和54年8月10日,原子力委員会は,「原子炉開発の基本路線における中間炉について」の決定を行い,原子力委員会としての見解を明らかにした。
 原子力委員会はこの中で,軽水炉から高速増殖炉に移行する基本路線に対する中間炉のあり方として,新型転換炉開発についてはこれを精力的に進める必要があり,早急にチェック・アンド・レビューに取りかかるものとするとの考えを示すとともに,CANDU炉を導入することについての積極的な理由を現段階において見出すのは難しいと判断せざるを得ないとの結論を下した。
 この中間炉についての決定に関しては,CANDU炉導入問題について更に詳細な原子力委員会の見解を求める向きもあった。このため,原子力委員会としては,その考え方についてより一層の理解を得ることが必要との見地から,エネルギー・セキュリティとの関係及び日加関係並びにCANDU炉の改造・定着化問題,経済性,資金人材問題及びCANDU炉の試験的導入に関する技術的問題等についての補足見解を明らかにした。

 〔高速増殖炉〕
 動力炉・核燃料開発事業団が開発中の高速増殖炉は,その実験炉である「常陽」が昭和52年4月の初臨界以来,順調に運転されている。すなわち「常陽」は昭和53年7月に第1期目標の熱出力5万kWを達成の後,昭和54年2月まで5万kWの定格運転を続けてきたが,同年7月,第2期目標の熱出力7.5万kWへの出力上昇に成功し,現在各種性能試験を実施している。
 これらの実験炉「常陽」での運転経験及び各種試験データは,今後の高速増殖炉開発,特に原型炉「もんじゅ」の設計,建設に反映されつつあり,高速増殖炉の自主開発技術の取得,蓄積という所期の目的を達成しつつある。
 原型炉「もんじゅ」は,その設計,建設,運転の経験を通じて高速増殖炉の性能,信頼性等を確認し,更に将来の実用発電炉としての経済性の目安を得ることを目的としているが,その設計については現在までの研究成果を踏まえた製作準備設計が引き続き実施された。また,建設準備に関しては,現在通商産業省及び福井県において立地点周辺の環境審査が実施されるとともに,それに続く安全審査のための準備作業が,進められている。長期計画に示した昭和60年代初頭の臨界をめざすためには今後とも財源問題,立地問題等に積極的に対処しなければならない。

 高速増殖炉に関する国際協力としては従来に引き続き日独仏の3国間協力,及び日ソ間協力を進めたほか,昭和54年1月日米高速増殖炉協力協定の改訂が行われ,協力分野の拡大等,協力の緊密化が図られた。

 〔新型転換炉〕
 同じく動力炉・核燃料開発事業団が開発を進めている新型転換炉は,原型炉「ふげん」が昭和53年3月の初臨界に引き続き,昭和53年3月電気出力16.5万kWの定格出力運転に入り,順調に運転,送電を続けている。今後定常運転を続けながら信頼性評価に必要な運転保守関係データの集積を続けることとしている。「ふげん」の本格運転開始により,将来軽水炉から高速増殖炉への基本路線を補完するものとしての同型炉の技術的見通しが得られつつある。
 原型炉「ふげん」に続く実証炉については,動力炉・核燃料開発事業団において概念設計が終了し,現在調整設計及びこれに関連する研究開発が進められている。更に,昭和54年2月には電気事業者と動力炉・核燃料開発事業団との間で,原型炉の運転実績,実証炉の設計方針等の検討を行い,電気事業者の意見を実証炉に反映させ新型転換炉の評価に資する目的で,ATR合同委員会が発足している。また昭和54年8月の中間炉に関する原子力委員会決定に沿って,実証炉建設についてのチェック・アンド・レビューを促進することとしている。


目次へ          第2章 第5節へ