第2章 原子力研究開発利用の進展
1.原子力発電

 昭和53年10月から現在までに新たに6基617.4万キロワットの原子力発電所が新たに運転を開始し,昭和54年12月の原子力発電設備は21基1,495.2万キロワットとなっている。この結果,国内の総発電設備の中で原子力発電設備の占める比率は,約12%となった。
 新しい原子力発電所の計画については,昭和53年10月及び12月に新たに2基226万キロワットが電源開発調整審議会での決定を受け,正式な計画として組み入れられた。これにより我が国の運転,建設及び建設準備中の原子力発電規模の合計は35基2,788.1万キロワットとなった。また,新規立地地点における立地が難航していること等から,長期計画に示した昭和60年度の原子力発電規模の目標については,約1年余の遅れが見込まれるに至っている。このため,昭和54年8月の総合エネルギー調査会需給部会の中間報告では,原子力発電について昭和60年度3,000万キロワット,昭和65年度5,300万キロワット,昭和70年度7,800万キロワットと見通しの修正を行っており,この見通しの達成のためにも今後とも計画的な立地対策の努力が必要である。
 原子力発電所の立地に関しては,昭和54年から原子力発電所の安全規制を一貫して行うこととなった通商産業省によって電源開発調整審議会の前に行われる第一次公開ヒアリングと,原子力安全委員会における安全審査に際して行われる第二次公開ヒアリングという形で,地元の意見を十分聴取しつつ進めることとされ,そのための体制整備が行われたほか,電源開発促進対策特別会計の効果的運用等,地点に即したきめ細かい対策を講じ地元住民の理解と協力を得るための施策が行われたが,今後ともこれらの施策の推進のために一層の努力が必要とされている。
 原子力発電所の設備利用率については,昭和53年度には56.6パーセントとなり,また,発電電力量も589億キロワット時となって全発電電力量の12.8パーセントを占め,前年度に比べると好稼動率を示した。しかしながら,その後,加圧水型炉における制御棒案内管支持ピン及びたわみピンの破損等の故障に加え,米国原子力発電所の事故の重要性にかんがみ各原子力発電所の安全点検に万全を期すための措置をとったこともあって,昭和54年度の設備利用率は約50パーセント程度にとどまると見込まれている。
 なお,昭和54年10月には,大飯発電所1号機で余熱除去ポンプのトラブルが発見されるとともに,11月には高浜発電所2号機で一次冷却水洩出事故があるなど,大過には至らなかったものの遺憾な事故が発生しており,関係者における安全確保のための一層の努力が望まれる。


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