第1章 原子力をめぐる内外の諸情勢

 昨年10月,原子力の安全確保を目的とした体制の充実を図るために原子力安全委員会が新設され,それに伴い原子力委員会も新たな体制で発足して以来はや1年を経過した。
 この一年間は,世界は,いわゆる第二次石油危機に伴うエネルギー情勢の一層の緊迫化と,米国のスリー・マイル・アイランド原子力発電所における事故の発生という,いわば原子力の研究開発利用を「促進する方向」と「抑制する方向」といったふたつの相反する働きをもつ大きなでき事に遭遇することとなった。このふたつは,我が国だけでなく,世界各国にも同じように大きな影響を与え,原子力の研究開発利用に関する賛否の議論の拡大とも相まって,原子力に対する関心を一層強めることとなった。
 原子力委員会は,昨年9月,新しい原子力研究開発利用長期計画(以下「長期計画」という)を取りまとめ,今後約10年間を目標とした原子力研究開発利用の長期的ビジョンと施策の重点を明らかにしたところであるが,これから1980年代以降の原子力政策を進めていくに当たりこのような情勢をも十分考慮しつつ対処していくこととしている。


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