7 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とカナダ政府との間の協定を改正する議定書

 日本国政府及びカナダ政府は,1959年7月2日にオタワで署名された原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とカナダ政府との間の協定(以下「協定」という。)を改正することを希望して,次のとおり協定した。
 第1条協定第3条を次のように改める。
 第3条
1 この協定に基づいて入手した設備,資材及び機微な情報,特定物質,並びにこの協定に基づいて入手した設備自体により又はその設備の使用により生産した重水は,いずれか一方の当事国政府の管轄の外に移転してはならない。ただし,他方の当事国政府の文書による事前の同意がある場合には,この限りでない。
2 特定物質は,供給当事国政府の文書による事前の同意がない場合には,受領当事国政府の管轄内において,20パーセントを超えて濃縮し又は再処理してはならない。また,特定物質であるプルトニウム又は20パーセントを超えて濃縮されたウランは,供給当事国政府の文書による事前の同意がない場合には,受領当事国政府の管轄内において,貯蔵してはならない。
3 原料物質,特殊核物質又は燃料は,特定物質の使用から生ずる特殊核物質であつて受領当事国政府,受領当事国政府の政府企業又は同政府の管轄の下にある者の使用に必要な量を超えるものを平和的非爆発目的にのみ使用するために購入する優先権を供給当事国政府に与えることを条件として,供給される。
4 いかなる場合にも,いずれの当事国政府も,商業上の利益を追求するために又は他方の当事国政府の商業上の関係を妨害するためにこの協定の規定を利用してはならない。
5 両当事国政府は,それぞれその管轄内にある特定物質に対し,この協定の附属書Aに定める指針の示すところに沿つて,適切な防護の措置をとる。
6 両当事国政府の代表者は,特定物質の保管に当たつて払うべ々注意に関する問題について,相互に協議する。
 第2条協定第4条を次のように改める。
 第4条
1 特定物質は,いかなる核兵器の製造のためにも,核兵器の製造以外のいかなる軍事的目的の助長のためにも又は核兵器以外のいかなる核爆発装置の製造のためにも使用されてはならない。
2  1の規定に基づく約束の履行は,カナダ国内においてはカナダ政府と国際原子力機関(以下「機関」という。)との間の協定に従い機関によつて,日本国内においては日本国政府と機関との間の協定に従い日本国政府及び機関によつて,確認される。これらの確認のための手続が効力を有しない場合には,両当事国政府は,機関の保障措置の原則及び手続に合致する保障措置制度を適用するために合意する。
 第3条協定第4条の次に次の一条を加える。
 第4条のA1978年8月22日に東京で署名されたこの協定に関する議定書の効力発生後日本国とカナダとの間で移転される設備,施設,資材,原料物質,特殊核物質,燃料及び機微な情報については,供給当事国政府がその移転に先立ち書面により受領当事国政府に通告した場合にのみ,この協定を適用する。
 第4条
1 協定第7条(a)を次のように改める。
(a)  「設備」とは,原子力活動に関連する研究,開発,利用,処理又は貯蔵に特に有用な器具,装置又は機械であつて,この協定の附属書Bに掲げるもの又は将来掲げることがあるものをいう。この場合において,
(i)設備であつてこの協定に基づいて入手した機微な情報を利用して設備され,建設され又は運転されていると受領当事国政府によつて又は受領当事国政府との協議の後に供給当事国政府によつて指定されたものは,この協定に基づいて入手した設備とみなす。
(ii)核物質の濃縮若しくは再処理,重水の生産又は重水減速炉に関連する設備であつて,その設備,建設又は運転過程がこの協定に基づいて入手した設備の設計,建設又は運転過程と本質的に同一であると受領当事国政府によつて又は受領当事国政府との協議の後に供給当事国政府によつて指定されたものは,この協定に基づいて入手した設備とみなす。
(iii)核物質の濃縮若しくは再処理,重水の生産若しくほ重水減速炉に関連する設備又は機微な情報の重要な移転があつたときは,その移転先の当事国政府の管轄内にあるいずれかの施設であつて,その設計,建設又は運転過程が当該設備又は当該機微な情報を基礎として又はこれらを利用して設計され,建設され又は運転される施設の設計,建設又は運転過程と本質的に同一であると受領当事国政府によつて又は受領当事国政府との後に供給当事国政府によつて指定されたものにおける設備は,当該設備又は当該機微な情報を利用した設備若しくは施設の最初の運転の時から20年の間,この協定に基づいて入手した設備とみなす。ただし,(ii)の規定の一般性を限定するものではない。
2 協定第7条(g)を次のように改める。
(g)「特定物質」とは,この協定に基づいて入手された原料物質,特殊核物質若しくは燃料,この協定に基づいて入手された原料物質,特殊核物質,燃料,設備,施設若しくは重水の使用により生じた特殊核物質又はこの協定に基づいて入手された設備自体により若しくはその設備を使用して生産された重水の使用冫こより生じた特殊核物質をいう。
3 協定第7条(j)を次のように改める。
(j)「情報」とは,技術に関する有形の資料をいい,設備,、資材,原料物質,特殊核物質又は燃料の設計,生産,運転又は試験に利用することができる技術的図面,写真の原板及び印画,録音物,設計資料並びに技術及び運転に関する説明書が含まれるが,これらには限られない。ただし,公衆が入手することのできる資料を除く。
(k)「公開の情報」とは,部外秘,秘又は極秘の秘密指定を受けていない情報をいう。
(l)「機微な情報」とは,原料物質,特殊核物質及び燃料の濃縮若しくは再処理,重水の生産又は重水減速炉に関する情報であつて,その供給に先立ち受領当事国政府との協議の後に,供給当事国政府により核爆発装置の不拡散のために特に規制の対象にすべきものとして指定されるものをいう。
 第5条協定第7条の次に次の2条を加える。
 第7条のAこの協定の解釈又は適用から生ずる紛争であつて,交渉又は両当事国政府が合意する他の手続により解決されないものは,いずれか一方の当事国政府の要請により,次のように構成される仲裁裁判所に付託する。すなわち,両当事国政府は,それぞれ,一人の仲裁裁判官を指名し,指名された二人の仲裁裁判官は裁判長となる第三の仲裁裁判官を選任する。
 仲裁裁判の要請が行われてから30日以内にいずれか一方の当事国政府が仲裁裁判官を指名しなかつた場合には,いずれか一方の当事国政府は,国際司法裁判所長に対し,一人の仲裁裁判官を任命するよう要請することができる。第二の仲裁裁判官の指名又は任命が行われてから30日以内に第三の仲裁裁判官が.選任されなかつた場合には,同じ手続が適用される。仲裁裁判には,仲裁裁判所の構成員の過半数が出席していなければならず,すべての決定は,二人の仲裁裁判官の合意を必要とする。仲裁裁判所の手続は,仲裁裁判所が定める。仲裁裁判所の決定は,両当事国政府を拘束する。
 第7条のBこの協定の附属書は,両当事国政府の合意により,この協定を改正することなく修正することができる。
 第6条協定第8条2の次に次のように加える。
3 この協定が廃棄された場合においても,この協定に基づいて入手した設備,施設及び資材並びに特定物質に関し,これらが現存している間又は両当事国政府により別段の合意が行われるまでの間,この協定第3条,第4条,第6条,第7条及び第7条のAの規定は,なお効力を有する。
4 いずれか一方の当事国政府の要請があつた場合には,両当事国政府は,関係のある国際的な場における討議の結果を考慮して,この協定を改正するかどうか又はこの協定に代わる新たな協定を締結するかどうかについて,相互に協議する。
 第7条
1 この議定書は,各当事国政府によりその国内法上の手続に従つて承認されなければならない。この議定書は,その承認を通知する外交上の公文の交換の日に効力を生ずる。
2 この議定書は,改正後の協定の第8条の3の規定に従うことを条件として,協定が効力を失う時に効力を失う。
 以上の証拠として,下名は,各自の政府から正当に委任を受けてこの議定書に署名した。
1978年8月22日に東京で,ひとしく正文である日本語,英語及びフランス語により本書2通を作成した。
 日本国政府のために 園田  直
 カナダ政府のためにジョン・H・ホーナー


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