第Ⅱ部 原子力開発利用の動向
第11章 原子力産業

1 原子力機器産業

 原子力機器産業は原子力エネルギーの供給を可能とする機器の供給を担うとともに,今後の新型炉開発等研究開発を担う重要な産業である。また,原子力機器産業は設計,製造から管理に至るまで高度の安全性,信頼性を確保しつつ,複雑かつ高度の原子力機器を製造する必要があることから,典型的な知識集約型システム産業としてまた技術先端産業として,今後の我が国産業構造の高度化を担つていくべき産業である。
 こうした産業としての特性から,原子力産業は極めて広範な技術を土台として成りたち,資本系列を通して,電気・機械を中心として,化学金属・土木等広範な事業分野にわたる原子力機器産業グループを形成しており,現在次の5グループにわかれている。

(社)日本原子力産業会議の調査によれば,昭和51年度における鉱工業の原子力関係売上高は新年度の98%の3,414億円,支出高は昨年とほぼ同程度の3,692億円と増加したが,差引き278億円の赤字(前年度は138億円)となつた。このように,我が国原子力産業界をとりまく環境は依然として厳しいものがある。
 過去,黒字を記録したのは,昭和38年度及び44年度の2回のみとなつており,昭和31年以降の21年間の累計では,総売上高1兆5,435億円,総支出高1兆6,844億円,差引き1,409億円の赤字となつている。
 軽水炉技術については,東芝,日立がゼネラルエレクトリック(GE)社から沸とう水型炉を,三菱がウエスチング・ハウス(WH)社から加圧水型炉を技術導入し,製造技術の習得に努めてきた。原子力発電所の主契約者について見れば,軽水炉の初期のものについては,GE,WH社が主契約者となり,国内メーカーはその下請けとして機器の製作に当たつていたが,その後日本のメーカーが主契約者となつて建設を行う例が多くなつている。しかし,現在建設の進められている100万kW級の大型原子力発電所では海外メーカーが主契約者となつている。
 原子力機器の国産化状況について見ると,初期の40~50%から出発し,現在建設中の軽水炉は96~97%に達しており,次第に国産化体制が整つてきている。特に重要な機器で高度の信頼性や実証性が要求され,国産化の遅れていた計測制御系,循環ポンプ,安全弁の一部,バルブ等についても国産化が進みつつある。
 これまでの建設経験により,我が国の原子炉機器産業はかなりの水準に達したが,西ドイツの軽水炉技術に見られるような独自のシステムを開発するまでに至つていない。
 原子炉機器産業は,(財)原子力工学試験センター等の活用によつて主要機器の信頼性を実証するとともに,その成果を活用して国産技術の確立に,より一層努めることが重要である。


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