第Ⅱ部 原子力開発利用の動向
第5章 国際関係活動

1 国際関係

 原子力分野における国際関係には,大別して3つの側面がある。
 第一は,核物質,役務,技術の移転を直接目的とするもの,第二は,核不拡散の保証のためのもの,第三は,研究協力,情報交換等の相互協力である。第一と第二とは従来から表裏一体となつているものであり,  一般には「原子力平和利用協力協定(いわゆる原子力協定)」に基づき進められる。同協定は資源,役務,技術等の移転に途を開くものであるが,同時に保障措置上の義務及び核物質の取扱いに関する幾つかの義務を政府に課するものであり,したがつて,原子力協定は国会で批准を必要とする条約という性格を持つている。
 海外にウラン資源,濃縮役務を頼り,かつ,当初技術導入により原子力開発を始めた我が国は,上設の国際関係を早くから有しており,それによりウラン鉱石の入手(日加原子力協定,日豪原子力協定),ウラン濃縮役務の確保(日米原子力協定),軽水炉導入(日米原子力協定),動力炉導入,天然ウランの入手(日英原子力協定),ウラン鉱入手,濃縮,再処理役務の確保(日仏原子力協定)を図つている。

 上述の各原子力協定とも,保障措置の実施を義務付けており,「保障措置の国際原子力機関への移管協定」により,各協定毎に,保障措置の国際原子力機関による実施を取り決めていたが,我が国が核不拡散条約を批推(昭和51年6月)し,その実施のための「保障措置協定」を国際原子力機関との間で締結した後は,その枠組での保障措置が以後実施されることとなつた。また各協定とも,核物質等の移転に際してそれが平和目的のみに使われることの確保,移転が政府の承認した者の間のみで行われること,第三国への再移転には,原子力資材供給国の合意が必要なこと等の義務を含んでいる。
 近年の核不拡散の強化という国際的な傾向の中で,この第二の側面を強化しようとの動きが活発となつているが,日加をはじめ,日豪,日米といつた二国間原子力協定も,この線に沿つて改訂されようとしており,日加原子力協定はすでに政府間交渉を終り,国会の批准をまつばかりとなつている。
 国際関係の第三の側面(研究協力,情報交換)は原子力協力協定のみならず科学技術協力協定(西独,ソ連),交換公文,政府間協議等に基づいても行われるが,近年我が国の研究開発水準の向上に伴い,積極的かつ対等な相互協力の傾向が顕著であるとともに,開発途上国からの技術協力の要請が一段と高まつている。

 この場合,相手国としては,同じ軽水炉路線をとる米国,西ドイッ,フランスとの間で,共通の関心事である安全性研究協力が進められているのをはじめ,核融合については,米国,ソ連と,高速増殖炉については,米国,英国,フランス,西ドイツ,ソ連と,また,高温ガス炉については,米国,西ドイツというように,分野毎に適宜協力相手国と協力形態とを選ぶことにより,最適な成果をあげることを目指している。
 以上は,二国間協力を中心に述べたが,他方では多国間での協力,並びに国際機関における協力がある。
 国際機関のうち,国際原子力機関(ⅠAEA)は,原子力技術の開発促進と同時に,核不拡散のための保障措置の実施という両面を持つが,経済協力開発機構原子力機関(OECD-NEA)及び同国際エネルギー機関(OECD-IEA)は,原子力開発利用面での政策をはじめ,新技術の開発と安全性の確保に関する意見交換等を行つている。
 以上,各々の国際関係での主要な動きを述べる。


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