第Ⅱ部 原子力開発利用の動向
第3章 安全の確保

3 核燃料施設等の安全確保

 核原料物質及び核燃料物質の使用,核燃料の加工,使用済燃料の再処理,核燃料物質等の輸送等のいわゆる核燃料サイクルについては,安全の確保,環境の保全を重視した規制が行われている。

(1)再処理施設の安全確保
 我が国初の再処理施設である動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設においては,昭和52年7月15日こ使用済燃料の搬入を開始し,同年9月22日に使用済燃料のせん断及び溶解を開始し,ホット試験(実際の使用済燃料を用いた試運転)を実施した。
 ホット試験は,再処理施設の操作性・安全性及び性能を確認するとともに,再処理施設の従業員の訓練を併せ実施し,再処理施設の円滑な操業に資することを目的とするものである。
 ホット試験の開始に先立ち,原子力委員会は,再処理施設からの低レベル廃液の海への放出に係る詳細な審査,再処理施設のホット試験計画の安全性等についての審査を行い,その安全性の確認をした。

①再処理施設からの低レベル廃液の海への放出に係る詳細な審査について
 低レベル廃液の海への放出に係る詳細な審査については,昭和50年7月から審議を開始し,「再処理施設安全審査専門部会」の施設関係分科会及び環境関係分科会においてそれぞれ施設面及び環境面の調査検討を進め,更にこの審査は「核燃料安全専門審査会の再処理部会」に引き継がれ,同部会において調査検討が進められた。
 その結果,低レベル廃液の海への放出に伴ない,周辺公衆が受ける被ばく線量は,昭和44年の再処理施設の設置に係る安全審査において評価した線量(12ミリレム/年)を更に下回り(6ミリレム/年),安全上問題のないことを再確認した。それを受け,核燃料安全専門審査会は,昭和52年4月25日再処理施設からの低レベル廃液の海への放出に係る安全性は,十分確保し得るものと認める旨の報告を原子力委員会に行い,原子力委員会は,昭和52年5月20日,内閣総理大臣に対し,同趣旨の答申を行つた。

②再処理施設のホット試験に係る安全性について
 ホット試験に係る試運転計画についての安全性の確保も核燃料安全専門審査会再処理部会で検討が進められた。
 審査は,試験に係る工程試験の項目,内容確認事項等が試験の目的に照らし,妥当なものであるかの確認及び試験を実施するに当たつて従業員等の被ばく管理,放射性廃棄物の管理,周辺環境への影響について問題はないと判断できる対策が講じられていることの確認を行い,その結果,ホット試験に係る試運転計画は妥当なものであり,それに基づいて試験を行うことは安全上支障がないものと認められる旨の結論を得,昭和52年4月25日原子力委員会あて報告した。原子力委員会は,昭和52年5月20日,内閣総理大臣に対して同趣旨の答申を行つた。
 ホット試験は,日本原子力研究所動力試験炉燃料を用いた試験(昭和52年9月~12月),沸とう水型軽水炉燃料を用いた試験(昭和53年2月~3月),加圧水型軽水炉燃料を用いた試験(昭和5“3年5月~6月),総合試験(昭和53年8月~)と段階を追い,ステップ・バイ・ステップに安全性を確認しながら実施された。ホット試験終了後においては,試運転結果の総合評価を行い,安全確保に万全を期すこととしている。
 なお,昭和53年8月に発生した酸回収蒸発缶の故障のため,現在,試験を中断しており,今後,所要の個所を点検,修理のうえ,更に施設の安全性及び性能を十分確認した後,試験を再開することとしている。

(2)核燃料物質の使用及び加工事業の安全確保
 核燃料物質を使用しようとする者又は加工の事業を行おうとする者に対しては,「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」に基づき,安全対策,放射線障害防止対策を重視した規制が行われている。
 昭和52年度の核燃料物質の使用許可件数は,新規許可2件,変更許可82件であり,これらのうち動力炉・核燃料開発事業団のウラン濃縮パイロットプラント及び高レベル放射性物質取扱施設並びに(財)核物質管理センターの保障措置分析所については,原子力委員会核燃料安全専門審査会において安全審査を実施した。また,施設検査件数は,70件であり,保安規定の新規認可は1件,変更認可は7件であつた。
 核燃料物質の加工の事業の許可については,新規許可はなく,変更許可は2件であり,これらは原子力委員会核燃料安全専門審査会において安全審査を実施した。また,設計及び工事の方法の認可は7件,施設検査は16件,保安規定の変更認可は3件であつた。昭和52年度末現在,使用者は154加工事業者は4となつた。

(3)核燃料物質等の輸送の安全確保
 核燃料物質等の輸送の技術基準については,原子炉等規制法,船舶安全法・航空法,これらに基づく総理府令,運輸省令等により規制を行つている。
 核燃料物質等の輸送容器,輸送方法等について最新の国際基準を取り入れ基準を整備強化するためには,輸送容器の設計,輸送方法等について適切な規制が必要であるが,科学技術庁及び運輸省においては,原子力委員会が決定した「放射性物質等の輸送に関する安全基準」に基づき放射線障害防止の技術的基準に関する放射線審議会答申(昭和52年8月)を経て,関係法令の改正を行い,昭和53年1月1日から木法令及び運用通達に基づき規制を行つている。
 更に,昭和53年6月7日に成立した原子炉等規制法の改正を含む原子力基本法等の一部改正法により,施設内外の輸送の規制体制が整備され,既に実施されている船舶及び舶空機輸送における確認行為が陸上輸送にも適用されることとなつたほか,都道府県公安委員会への運搬届出制度が新設され,核燃料物質の輸送に関する安全規制が陸海空にわたり強化されることとなる。
 なお,科学技術庁においては専門家からなる「核燃料輸送物審査検討会」において専門的事項の助言を得た上で核燃料物質の輸送容器等の設計審査を進めており,52年度は27件の審査を完了した。
 核燃料物質等の輸送の安全対策については,核燃料安全専門審査会において継続的に審議を行つている。このうち昭和53年9月には我が国における使用済燃料の海上輸送に係る安全性について調査審議のうえ報告書をとりまとめ原子力委員会へ報告した。


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