第Ⅱ部 原子力開発利用の動向
第3章 安全の確保

1 安全規制行政

 広く国民の関心の的となつていた原子力安全行政のあり方を検討するため,政府は,原子力問題に関する学識経験者からなる「原子力行政懇談会」を設けた。同懇談会は1年以上に及ぶ審議を続けてきたが,昭和51年7月その結論を取りまとめるに到つた。その内容は,国民の理解と協力を得つつ,原子力開発を進めていくためには,
① 従来の原子力委員会の開発と規制の機能とを分離し,新たに原子力安全委員会を設け,安全基準の策定,ダブルチェックを行わせること。
② 現在各省庁にまたがつて行われている安全審査から運転管理に至るまでの規制行政の一貫化を図ること。
 が必要であるというものであつた。
 この答申を受け,政府は原子力安全委員会の新設と原子力安全行政の一貫化を目的とする「原子力基本法等の一部を改正する法案」を国会に提出し,同法は昭和53年6月第84国会で可決成立し,我が国原子力行政体制は大きく変わることとなつた。
 これにより,従来の原子力委員会の他に新たに原子力安全委員会が設けられることとなり,原子力の安全の確保に関する事項を所掌することとなつた。
 原子炉の設置許可,加工の事業の許可等を行うに当たつては,各主務大臣は原子力委員会及び原子力安全委員会の意見を聞くこととされており,特に国民の関心の深い安全性については原子力安全委員会が,行政庁の行つた安全審査をより高度の知見をもつて再審査(ダブルチェック)するという新たな安全審査の方法をとることとしている。
 また,行政庁の行つている原子炉の規制について,従来は例えば発電炉の規制にみられる様に,基本設計段階の安全審査は内閣総理大臣,詳細設計以降運転管理等の安全確保は通商産業大臣というシステムであつたが,安全規制の一貫化後は,一人の主務大臣が責任を持つて安全規制を行うこととなつた。すなわち,実用発電炉については通商産業大臣が,実用舶用炉については運輸大臣が,試験研究用炉及び研究開発段階にある原子炉については内閣総理大臣がそれぞれ設置許可から運転管理に至る一連の安全規制に一貫しであたることとした。また,核燃料施設は,従来どおり科学技術庁で一元的に規制された。


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