第Ⅱ部 原子力開発利用の動向
第2章 核燃料サイクル

5 核燃料物質の輸送

 海外から我が国への核燃料物質の輸送としては,発電所用低濃縮ウラン燃料の場合,完成燃料体の形で輸入されるものは極めて少なく,大部分は二酸化ウラン粉末又はシリンダー入りの六フッ化ウランの形態で輸入されている。また,研究開発用若しくは研究炉用の高濃縮ウラン,プルトニウムの場合は,それぞれ金属ウラン,プルトニウム酸化物として輸入されている。
 我が国から外国への輸送としては,現在,英国等に委託して再処理を行つているため,使用済燃料は直接発電所サイトから船舶で海外へ輸送している。
 昭和52年度は,日本原子力発電(株)の東海炉及び敦賀炉の使用済燃料が英国燃料公社(BNFL)へ,また日本原子力研究所の研究炉の使用済燃料が米国へ輸送された。国内では動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設のホット試験の開始に伴い,日本原子力研究所動力試験炉(JPDR)の使用済燃料の陸上輸送が,また,東京電力(株)及び関西電力(株)からは使用済燃料専用運搬船「日の浦丸」による海上輸送がそれぞれ実施された。
 今後全国各地の原子力発電所が稼働し,海外再処理委託量が増加するとともに国内において再処理施設の本格操業が開始される見込みであるため,使用済燃料等の核燃料物質の輸送は,今後とも拡大することが予想される。昭和52年度は民間においてこのような輸送の本格化に対処するため,輸送サービス機関が既に事業を開始しており,また軽水炉用使用済輸送容器の国産化が行われている。
 更に,使用済燃料の輸送については,その安全性について広く理解を得ることが必要と考えられるため,昭和52年度は,使用済燃料輸送容器の安全性に関し,実規模の輸送容器を用いて行う落下強度試験,耐圧試験,伝熱試験,しゃへい試験等を内容とする使用済燃料輸送容器信頼性実証試験に必要な施設の建設が開始された。


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