第Ⅰ部 総論
第2章 原子力研究開発利用の進展と新長期計画

4 新型動力炉,核融合等に関する研究開発

 〔高速増殖炉〕
 動力炉・核燃料開発事業団が開発中の高速増殖炉については,その実験炉である「常陽」が昭和52年4月に初臨界に達した。その後各種試験を進め,現在熱出力5万KWの定格運転を順調に行つている。これは,軽水炉に続く次代の原子炉の本命として期待されている高速増殖炉の自主技術による開発に明るい見通しを与える大きな成果である。また,その性能,信頼性等を確認すること等を目的とした原型炉「もんじゆ」についてもその設計をほぼ終了し建設準備が整えられた。今後は更にこれらの成果を踏まえ実証炉の開発の準備を進める必要がある。

 高速増殖炉に関する国際協力については,日独間の協力が昭和46年以来続けられてきたが,昭和53年6月新たにフランスが参加することになり,3国間における幅広い協力体制が確立された。また,日・ソ間での高速増殖炉協力についても,昭和53年1月両国において日・ソ科学技術協力協定の枠内で進めることが合意され,昭和54年度から開始されることとなつた。

 〔新型転換炉〕
 同じく動力炉・核燃料開発事業団において開発中のプルトニウム,減損ウラン等を有効に利用できる新型転換炉については,その原型炉「ふげん」が昭和53年3月に初臨界に達するとともに7月には試験発電を開始し,現在昭和54年3月末の電気出力16万5千キロワットの本格運転をめざし,順調に試験を進めている。これにより将来,高速増殖炉を補完するものとしての同型炉の技術的見通しが得られつつある。これらの成果は,我が国の完全な自主技術による原子炉開発がようやく根付きはじめたものといえる。

 〔多目的高温ガス炉〕
 日本原子力研究所等において実施されている核熱エネルギーを産業に供給する多目的高温ガス炉の開発については,高温ガスループによる試験が実施される等順調に進展した。また,直接製鉄などの利用系技術の開発も進められた。今後,次の開発段階としては,大型高温高圧ヘリウムガスループによる試験結果等を踏まえつつ,発生高温ガス温度1,000℃を目標とする実験炉の建設について検討を進める段階にきた。
 また,昭和52年4月,日独両国により,高温ガス炉協力が合意され,現在,実施機関の間において,協力内容及び協力方法等に関して協議が行われている。

 〔核融合〕
 核融合の研究開発については,昭和50年に決定した第2段階基本計画の中核となる「臨界プラズマ試験装置(JT-60)」の設計仕様の検討が終了し,昭和53年4月から木体部分の製作が開始された。このJT-60が成功すれば核融合利用の実用化が原理的に可能であることが実証されることとなる。
 なお,日本原子力研究所はJT-60を含む核融合研究施設の用地として昭和53年7月茨城県那珂町を選定し,地元との折衝を行つている。この他中間ベーダ値トーラス装置(JFT-2)等を使用した研究開発も着実に成果を挙げつつある。
 昭和52年9月基本的に合意された日米核融合協力は,昭和53年5月の日米首脳会談に基づく「新エネルギー研究開発に関する日米科学技術協力構想」においても,最も優先度の高いものとして位置付けられた。今後,更に資金分担等の諸問題や具体的な協力の進め方等について,米側と協議を進めることとしている。本協力は,従来の研究協力に比較して,その規模の面において,また,その内容の面においても画期的なものであり,その成果が多いに期待されている。また,ソ連との協力についても,高速増殖炉協力と同様に昭和54年度から開始されることになつた。この他,経済協力開発機構国際エネルギー機関(OECD-ⅠEA)における核融合協力についても,超電導磁石に関する研究開発に参加する等新たな進展があつた。

 〔原子力船「むつ」〕
 日本原子力船開発事業団における原子力第1船「むつ」の開発については,遮へい改修の基本設計を完了した。安全性の総点検のうち,設計面の再評価については,日本原子力研究所等の協力を得て作業を進めている。「むつ」の遮へい改修工事及び原子カプラントの設備面の点検については,今後約3年間にわたり佐世保港で行われることとなつている。
 日本原子力船開発事業団法については,昭和52年11月,第82回国会において同事業団法の廃止するものとされる期限を,昭和55年11月30日までとするよう改正された。この改正の趣旨を踏まえ,原子力船の研究開発体制の整備を図ることにしている。また,「むつ」は,昭和53年10月,青森県むつ市の大湊港から佐世保港へ回航された。


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