1.原子力委員会の計画及び方針

(6)発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針

(昭和52年6月14日)
原 子 力 委 員 会

 I まえがき
 本指針は,原子炉設置許可申請に際して,安全設計の審査を行うに当たって,その設計方針の妥当性を評価するための審査上の指針としてとりまとめたものである。
 現行の[軽水炉についての安全設計に関する審査指針について」は,米国原子力委員会が1967年7月に発表した「原子力発電所一般設計指針(General Design Criteria for Nuclear Power Plants)」等を参考にして当委員会が昭和45年4月に策定したものである。
 しかし,現行審査指針の策定以来約7年の歳月を経た今出その後において得られた数々の知識や経験の蓄積を背景とするとき,安全性の評価をする上で,より適切,かつ妥当であると考えられる指針を提案できる点が少なからず見られるにいたった。
 このような観点から,当委員会は,原子炉安全技術専門部会を設置し,現行指針の全面的な見直しを行ったものである。

 II 適用範囲
 本指針が適用される範囲は,発電用軽水型原子炉の設置許可申請(変更許可申請を含む)に際して,安全設計に関する基本方針について,審査を行うに際しての評価の指針に限定される。
 本指針は,このような意図のもとに作成されたものであるので,一般的な原子炉の設計のための基準を指向したものではない。
 本指針に示されている全規定は,発電用軽水炉の安全審査上重要と考えられる安全設計の基本事項について集約されているので,原子炉設置許可申請に際しての安全審査の段階においては,少なくとも本指針は十分に満足されなければならない。しかし,許可申請の内容が本指針に適合しない場合があったとしても,それが技術的な改良,進歩等を反映して,本指針が満足される場合と同等の安全性を確保し得ると判断される場合,これを排除しようとするものではない。
 なお,本指針は,発電用軽水炉に適用されるものと限定しているが,軽水炉特有の規定を除外すれば,他の原子炉施設の安全設計審査指針としても参考となり得ると考える。

 III 用語の定義
 本指針において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 「安全上重要な構築物,系統及び機器」とは,その機能喪失により,一般公衆及び従事者に過度の放射線被曝を及ぼすおそれのある構築物,系統及び機器並びに事故時に一般公衆及び従事者に及ぼすおそれのある過度の放射線被曝を緩和するために設けられた構築物,系統及び機器をいう。
(2) 「格納容器バウンダリ」とは,冷却材喪失事故時に,圧力障壁となり,かつ,放射性物質の放散に対する障壁を形成するよう設計された範囲の施設をいう。
(3) 「原子炉冷却材圧力バウンダリ」とは,原子炉の通常運転時に,原子炉冷却材を内包して原子炉と同じ圧力条件となり,運転時の異常な過渡変化時及び事故時の苛酷な条件下で圧力障壁を形成するもので,それが破壊すると冷却材喪失事故となる範囲の施設をいう。
(4) 「原子炉停止系」とは,原子炉の臨界又は臨界超過の状態から原子炉に負の反応度を挿入することにより,原子炉を臨界未満にし,高温停止から低温停止に至らしめ,かつ,停止状態を維持するための機能を備えるよう設計された設備をいう。
(5) 「反応度制御系」とは,原子炉炉心の反応度を制御することにより,原子炉の出力,燃焼及び核分裂生成物等の変化による反応度変化を制御するよう設計された設備をいう。
(6) 「安全保護系」とは,異常状態を検知し,それを防止又は抑制するために,安全保護動作を起こさせるよう設計された設備及び事故状態を検知し,必要な工学的安全施設の作動を開始させるよう設計された設備をいう。
(7) 「工学的安全施設」とは,原子炉施設の破損,故障等に起因して原子炉内の燃料の破損等による多量の放射性物質の放散の可能性がある場合に,これらを抑制又は防止するための機能を備えるよう設計された施設をいう。
(8) 「単一故障」とは,単一の事象に起因して1つの機器が所定の安全上の機能を失うことをいい,単一の事象に起因して必然的に起こる多重故障を含む。
(9) 「動的機器」とは,外部からの動力の供給を受けて,それを含む系が本来の機能を果たす必要があるとき,機械的に動作する部分を有する機器をいう。
(10) 「多重性」とは,同一の機能を有する系が2つ以上あることをいう。
(11) 「独立性」とは,多重に設けた機器又は系統が設計上考慮する環境条件及び運転状態に対して共通要因又は従属要因によって同時に故障状態にならないことをいう。
(12) 「燃料の許容設計限界」とは,原子炉の設計と関連して,燃料の損傷が安全設計上許容される程度であり,かつ,継続して原子炉施設の連転をすることができる限界をいう。
(13) 「通常運転時」とは,原子力発電所の起動,停止,出力運転,高温待機,及び燃料取替等が,計画的又は頻繁に行われた場合,運転条件が所定の制限値以内にある運転状態をいう。
(14) 「運転時の異常な過渡変化時」とは,原子炉の運転状態において,原子炉施設の寿命期間中に予想される機器の単一故障若しくは誤動作又は運転員の単一誤操作によって外乱が加えられた状態及びこれらと類似の頻度で発生し,原子炉施設の運転状態が計画されていない状態に至る場合をいう。
(15) 「事故時」とは,「運転時の異常な過渡変化時」を超える異常状態であって,発生する頻度は稀であるが,原子炉施設の安全性を評価する観点から想定される事故事象が発生した状態をいう。

 IV 原子炉施設全般
 指針1. 準拠規格及び基準
 安全上重要な構築物,系統及び機器の設計,材料の選定,製作及び検査については,安全上適切と認められる規格及び基準によるものであること。

 指針2. 自然現象に対する設計上の考慮
1. 安全上重要な構築物,系統及び機器は,地震により機能の喪失や破損を起こした場合の安全上の影響を考慮して,重要度により耐震設計上の区分がなされるとともに,敷地及び周辺地域における過去の記録,現地調査等を参照して,最も適切と考えられる設計地震動に十分耐える設計であること。
2. 安全上重要な構築物,系統及び機器は,地震以外の自然現象に対して,寿命期間を通じてそれらの安全機能を失うことなく,自然現象の影響に耐えるように,敷地及び周辺地域において過去の記録,現地調査等を参照して予想される自然現象のうち最も苛酷と考えられる自然力及びこれに事故荷重を適切に加えた力を考慮した設計であること。

 指針3. 人為事象に対する設計上の考慮
 原子力発電所は,安全上重要な構築物,系統及び機器に対する第三者の不法な接近等の人為事象に対し,これを防護するための適切な措置を講じた設計であること。

 指針4. 環境条件に対する設計上の考慮
 安全上重要な構築物,系統及び機器は,通常運転時,運転時の異常な過渡変化時及び事故時において,それらの環境条件に適合できる設計であること。

 指針 5. 飛来物等に対する設計上の考慮
 安全上重要な構築物,系統及び機器は,想定される飛来物,配管のむち打ち又は流出流体の影響等から生じるおそれのある動的影響,熱的影響又は溢水によって原子炉の安全を損うことのない設計であること。

 指針6. 火災に対する設計上の考慮
 安全上重要な構築物,系統及び機器は,適切な配置,防火壁の設置をする等,火災に対する防護上の配慮がなされるとともに,これらは実用上可能な限り不燃性又は難燃性材料を使用する設計であること。
 また,これらの構築物,系統及び機器に対して,適切な火災検出装置及び消火装置を設置し,これらの装置の破損又は不測の作動があっても,構築物,系統及び機器は,それらの安全機能を失うことのない設計であること。

 指針7. 共用の禁止
 安全上重要な構築物,系統及び機器は,共用によって安全機能を失うおそれのある場合,原子炉施設間で共用しない設計であること。

 指針8. 系統の単一故障
 安全上重要な系統は,非常用所内電源系のみの運転下又は外部電源系のみの運転下で,単一故障を仮定しても,その系統の安全機能を失うことのない設計であること。

 指針9. 電源喪失に対する設計上の考慮
 原子力発電所は,短時間の全動力電源喪失に対して,原子炉を安全に停止し,かつ,停止後の冷却を確保できる設計であること。
 ただし,高度の信頼度が期待できる電源設備の機能喪失を同時に考慮する必要はない。

 指針10. 試験可能性に対する設計上の考慮
 安全上重要な構築物,系統及び機器は,それらの健全性及び能力を確認するために,その重要度に応じ,原子炉の運転中に試験及び検査ができるか,又は原子炉の定期点検停止時若しくは燃料取替停止中に適切な方法により試験及び検査ができる設計であること。

 指針11. 避難通路に対する設計上の考慮
 原子力発電所は,通常の照明用電源喪失時においても,その機能を失うことのない照明を設備し,かつ,単純,明確,永続性のある標識のついた安全避難通路を有する設計であること。

 指針12. 通信連絡設備に対する設計上の考慮
 原子力発電所は,適切な警報系統及び通信連絡設備を備え,事故時に発電所内にいるすべての人々に対し,少なくとも一つの中央位置から指示ができるとともに,発電所と所外必要箇所との通信連絡設備は,多重性を有する設計であること。

 V 原子炉及び計測制御系

 指針13. 原子炉設計
 原子炉の炉心及びそれに関連する原子炉冷却系,計測制御系並びに安全保護系は,通常運転時及び運転時の異常な過渡変化時において,燃料の許容設計限界を超えることなく,それぞれの機能を果たし得る設計であること。

 指針14. 燃料設計
1. 燃料集合体は,原子炉内における使用期間中を通じ,他の炉心構造物との関係を含め,その健全性を失うことがなく,炉心の性能を十分に発揮し得る設計であること。
2. 燃料集合体は,燃料棒の内外圧差,燃料及び他の材料の照射,負荷の変化により起こる圧力・温度の変化,化学的効果,静的及び動的荷重,変形又は化学的変化の結果起こり得る熱伝達挙動の変化等を考慮した設計であること。
3. 燃料集合体は,輸送及び取扱い中に燃料棒の変形等による過度の寸法変化を生じない設計であること。

 指針15. 原子炉の固有な特性
 原子炉の炉心及びそれに関連する原子炉冷却系は,すべての運転範囲で急速な固有の負の反応度フィードバック特性を有する設計であること。

 指針16. 出力振動の抑制
 原子炉の炉心及びそれに関連する原子炉冷却系,計測制御系並びに安全保護系は,燃料の許容設計限界を超える状態となる出力振動が生じないように十分な減衰特性を持たせる設計であるか,又はたとえ出力振動が生じてもそれを確実に,かつ,容易に検出して抑制できる設計であること。

 指針17. 計測制御系
1. 計測制御系は,通常運転時及び運転時の異常な過渡変化時において,次の事項を十分考慮した設計であること。
(1) 原子炉の炉心,原子炉冷却材圧力バウンダリ及び格納容器バウンダリ並びにそれらに関連する系統の健全性を確保するために必要なパラメー夕は,適切な予想範囲に維持制御されること。
(2) 上記のパラメータについては,予想変動範囲内での監視が可能であること。
2. 計測制御系は,事故時において,事故の状態を知り対策を講じるのに必要なパラメータを確視できる設計であること。

 指針18. 電気系統
1. 安全上重要な構築物,系統及び機器の安全機能を確保するために電源を必要とする場合には,必要な電源として外部電源系及び非常用所内電源系を有する設計であること。
2. 外部電源系は,2回線以上の送電線により電力系統に接続される設計であること。
3. 非常用所内電源系は,十分独立な系統とし,外部電源系の機能喪失時に,1つの系統が作動しないと仮定しても,次の事項を確実に行うのに十分な容量及び機能を有する設計であること。
(1) 運転時の異常な過渡変化時において,燃料の許容設計限界及び原子炉冷却材圧力バウンダリの設計条件を超えることなく原子炉を停止し冷却すること。
(2) 冷却材喪失等の事故時の炉心冷却を行い,かつ,格納容器の健全性並びにその他の安全上重要な系統及び機器の機能を確保すること。
4. 安全上重要な電気系統は,系統の重要な部分の適切な定期的試験及び検査ができる設計であること。

 指針19. 制御室
 制御室は,事故時にも,従事者が制御室に接近し,又は留まり,事故対策操作が可能であるように不燃設計,遮蔽設計及び換気設計がされ,かつ,事故によって放出することがあり得る有毒ガスに対し適切な防護がなされた設計であること。

 指針20. 制御室外からの停止機能
 原子炉は,制御室外の適切な場所から停止することができるように,次の機能を有する設計であること。
(1) 原子炉施設を安全な状態に維持するために必要な計測制御機能を含め,原子炉の急速な高温停止ができること。
(2) 適切な手順を用いて原子炉を引き続き低温停止できること。

 VI 原子炉停止系,反応度制御系及び安全保護系
 指針21. 原子炉停止系の独立性
 原子炉停止系は,高温待機状態又は高温運転状態から,燃料の許容設計限界を超えることなく炉心を臨界未満にでき,かつ,高温状態で臨界未満を維持できる少なくとも2つの独立した系を有する設計であること。

 指針22. 原子炉停止能力
1. 原子炉停止系の少なくともーつは,通常運転時及び運転時の異常な過渡変化時において,燃料の許容設計限界を超えることなく高温状態で炉心を臨界未満にでき,かつ,高温状態で臨界未満を維持できる設計であること。
2. 原子炉停止系の少なくとも一つは,低温状態で炉心を臨界未満にでき,かつ,低温状態で臨界未満を維持できる設計であること。

 指針23. 原子炉停止系の反応度停止余裕
 制御棒による原子炉停止系は,高温状態及び低温状態において,反応度効果の最も大きい制御棒が完全に炉心の外に引き抜かれ固着して挿入できない時でも,炉心を臨界未満にできる設計であること。

 指針24. 原子炉停止系の事故時の維持能力
 原子炉停止系の少なくとも1つは,事故時において,炉心を臨界未満にでき,また,原子炉停止系の少なくとも1つは,炉心を臨界未満に維持できる設計であること。

 指針25. 制御棒の最大反応度価値
 制御棒の最大反応度価値及び反応度添加率は,想定される反応度事故に対して原子炉冷却材圧力バウンダリを破損せず,また炉心冷却を損うような炉心,炉心支持構造物及び圧力容器内部構造物の破壊を生じない設計であること。

 指針26. 反応度制御系の安全機能
 反応度制御系は,負荷変動,キセノン濃度変化,高温から低温までの温度変化,燃料の燃焼等によって生じることが予想される反応度変化を調整し,所要の運転状態に維持し得る設計であること。

 指針27. 安全保護系の過渡時の機能
1. 安全保護系は,運転時の異常な過渡変化時に,その異常状態を検知し,原子炉停止系を含む適切な系の作動を自動的に開始させ,燃料の許容設計限界を超えないように考慮した設計であること。
2. 安全保護系は,偶発的な制御棒の引抜きのような原子炉停止系のいかなる単一の誤動作に対しても,燃料の許容設計限界を超えないように考慮した設計であること。

 指針28. 安全保護系の事故時の機能
 安全保護系は,事故時にあっては,直ちにこれを検知し,原子炉停止系及び工学的安全施設の作動を自動的に開始させる設計であること。

 指針29. 安全保護系の多重性
 安全保護系は,その系を構成するいかなる機器又はチャンネルの単一故障が起こっても,あるいは使用状態からの単一の取り外しを行っても,安全保護機能を失うことにならないような多重性を有する設計であること。

 指針30. 安全保護系の独立性
 安全保護系は,通常運転時,運転時の異常な過渡変化時,保修時,試験時及び事故時において,その保護機能が喪失しないように,その系を構成するチャンネル相互を分離し,重複したそれぞれのチャンネル間の独立性を実用上可能な限り考慮した設計であること。

 指針31. 安全保護系の故障時の機能
 安全保護系は,駆動源の喪失,系の遮断及びその他の不利な状況になっても,最終的に安全な状態に落着くような設計であること。

 指針32. 安全保護系と計測制御系との分離
 安全保護系は,計測制御系との部分的共用によって,安全保護系の機能を失わないように,計測制御系から分離されている設計であること。

 指針33. 安全保護系の試験可能性
 安全保護系は,原則としてその機能を原子炉の運転中に,定期的に試験できるとともに,その健全性及び多重性の維持を確認するため,各チャンネルが独立に試験できる設計であること。

 VII 原子炉冷却系
 指針34. 原子炉冷却材圧力バウンダリの機能
 原子炉冷却材圧力バウンダリは,異常な冷却材の漏洩,又は破損の発生する可能性が極めて小さくなるよう考慮された設計であること。

 指針35. 原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性
 原子炉冷却系及びその関連補助系,計測制御系並びに安全保護系は,通常運転時,運転時の異常な過渡変化時及び事故時において,原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性を確保できる設計であること。

 指針36. 原子炉冷却材圧力バウンダリの漏洩検出
 原子炉冷却材圧力バウンダリは,冷却材の漏洩があった場合,その漏洩を速やかに,かつ,確実に検出できる設計であること。

 指針37. 原子炉冷却材圧力バウンダリの破壊防止
 原子炉冷却材圧力バウンダリは,通常運転時,運転時の異常な過渡変化時,保修時,試験時及び事故時において,脆性的挙動を示さず,かつ,急速な伝播型破断を生じない設計であること。

 指針38. 原子炉冷却材補給系
 原子炉冷却材補給系は,原子炉冷却材圧力バウンダリからの冷却材の漏洩及び原子炉冷却材圧力バウンダリに接続する小さな配管の破断又は小さな機器の損傷による冷却材の漏洩があった場合でも,燃料の許容設計限界を超えないように,十分に給水できる能力を有する設計であること。

 指針39. 残留熱除去系
 残留熱除去系は,原子炉の停止時に,燃料の許容設計限界及び原子炉冷却材圧力バウンダリの設計条件を超えないように,原子炉の炉心からの核分裂生成物の崩壊熱及び他の残留熱を除去できる設計であること。

 指針40. 非常用炉心冷却系
1. 非常用炉心冷却系は,想定される配管破断による冷却材喪失事故に対して,燃料及び燃料被覆の重大な損傷を防止でき,かつ,燃料被覆の金属と水との反応を十分小さな量に制限できる設計であること。
2. 非常用炉心冷却系は,非常用所内電源系のみの運転下で単一故障を仮定しても,系統の安全機能が達成できるように,独立性を有する設計であること。
3. 非常用炉心冷却系は,定期的に試験及び検査ができるとともに,その健全性及び多重性の維持を確認するため,独立に各系統の試験及び検査ができる設計であること。

 指針41. 冷却水系
 冷却水系は,通常運転時,運転時の異常な過渡変化時及び事故時において,安全上重要な構築物,系統及び機器の全熱負荷を最終的な熱の逃がし場に確実に伝達できる設計であること。

 VIII 原子炉格納容器
 指針42. 格納容器の機能
1. 格納容器は,想定される配管破断による冷却材喪失事故に際して,事故後の想定される最大エネルギー放出によって生じる圧力と温度に耐え,かつ,出入口及び貫通部を含めて所定の漏洩率を超えることがないような設計であること。
2. 格納容器は,定期的に所定の圧力で格納容器全体の漏洩率試験ができる設計であること。
3. 格納容器は,電線,配管等の貫通部及び出入口の重要な部分の漏洩率試験及び検査ができる設計であること。

 指針43. 格納容器熱除去系
 格納容器熱除去系は,想定される配管破断による冷却材喪失事故に際して,事故後の想定される最大エネルギー放出によって生じる格納容器内の圧力及び温度を低下させるために十分な機能を有する設計であること。

 指針44. 格納施設雰囲気浄化系
 格納施設雰囲気浄化系は,冷却材喪失事故時等において,環境に放出される核分裂生成物及びその他の物質の濃度を減少させる機能を有する設計であること。

 指針45. 可燃性ガス濃度制御系
 可燃性ガス濃度制御系は,格納施設の健全性を維持するため,冷却材喪失事故後の格納施設内に存在する水素又は酸素の濃度を抑制することができる機能を有する設計であること。

 指針46. 格納容器バウンダリの破壊防止
 格納容器バウンダリは,通常運転時,運転時の異常な過渡変化時,保修時,試験時及び事故時において,脆性的挙動を示さず,かつ,急速な伝播型破断を生じない設計であること。

 指針47. 格納容器を貫通する配管系
1. 格納容器を貫通する配管系は,格納容器の機能を確保するために必要な隔離能力を有するとともに,ベローを有する配管貫通部は,漏洩検出又は漏洩試験ができる設計であること。
2. 格納容器を貫通する配管系に設けられる隔離弁は,定期的な動作試験が可能であり,かつ,弁の漏洩率が許容限界内にあることを確認できる設計であること。

 指針48. 格納容器を貫通する系及び閉じた系の隔離弁
1. 原子炉冷却材圧力バウンダリに連絡するか,又は格納容器内に開口し,原子炉格納容器を貫通している各配管は,冷却材喪失事故時に必要とする配管及び計測配管のような特殊な細管を除いて,次の事項を満足する隔離弁を有する設計であること。
(1) 原則として格納容器の内側に1個,外側に1個の自動隔離弁を設けること。
(2) 格納容器の自動隔離弁は,実用上可能な限り格納容器に接近して設けること。
(3) 上記の自動隔離弁の駆動動力源は,その多重性を十分考慮し,駆動動力源の単一故障によって上記の自動隔離弁が同時に隔離機能を喪失することのないこと。
2. 格納容器内側又は外側において閉じた系は,少なくとも1個の自動隔離弁を実用上可能な限り格納容器に接近して設ける設計であること。

 IX 燃料取扱い及び廃棄物処理系
 指針49. 核燃料の貯蔵及び取扱い
1. 新燃料及び使用済燃料の貯蔵設備及び取扱い設備は,次の事項を満足する設計であること。
(1) 安全上重要な機器の適切な定期的試験及び検査ができること。
(2) 貯蔵設備は,適切な格納系及び空気浄化系を有すること。
(3) 貯蔵設備は,適切な貯蔵容量を有すること。
(4) 取扱い設備は,移送操作中の燃料集合体の落下を防止できること。
2. 使用済燃料の貯蔵設備及び取扱い設備は,前項の事項のほか,次の事項を満足する設計であること。
(1) 放射線防護のための適切な遮蔽を有すること。
(2) 貯蔵設備は,残留熱を十分に除去できる冷却水系及びその浄化系を有すること。
(3) 貯蔵設備の冷却水保有量が著しく減少することを防止し,適切な漏洩検知を行うことができること。
(4) 貯蔵設備は,燃料集合体の取扱い中の想定される落下時にも,損傷するおそれがないこと。

 指針50. 核燃料の臨界防止
 核燃料の貯蔵設備及び取扱い設備は,幾何学的な安全配置,又は他の適切な手段により想定されるいかなる場合でも,臨界を防止する設計であること。

 指針51. 核燃料取扱い場所のモニタリング
 核燃料の取扱い場所は,残留熱の除去能力の喪失に至る状態及び過度の放射線レベルが検出できるとともに,その事態を適切に従事者に伝えるか,又は自動的に対処できる設計であること。

 指針52. 放射性気体廃棄物の処理
 原子力発電所の運転に伴い発生する放射性気体廃棄物の処理施設は,適切な濾過,貯留,減衰及び管理等を行うことにより,周辺環境に対して,放出放射性物質の濃度及び量を実用可能な限り低減できる設計であること。

 指針53. 放射性液体廃棄物の処理
 原子力発電所の運転に伴い発生する放射性液体廃棄物の処理施設は,適切な濾過,蒸発処理,イオン交換,貯留,減衰及び管理等を行うことにより,周辺環境に対して,放出放射性物質の濃度及び量を実用可能な限り低減できる設計であること。

 指針54. 放射性固体廃棄物の処理
 原子力発電所の運転に伴い発生する放射性固体廃棄物の処理施設は,遮蔽,遠隔操作等によって,従事者の被曝線量を実用可能な限り低減できる設計であること。

 指針55. 固体廃棄物貯蔵施設
 固体廃棄物貯蔵施設は,原子力発電所の運転に伴い発生する固体廃棄物を貯蔵する容量が十分であるとともに,固体廃棄物の貯蔵による敷地周辺の空間線量率を実用可能な限り低減できる設計であること。

 指針56. 放射線防護
 原子力発電所は,従事者の作業性等を考慮して,従事者が立入場所において不必要な放射線被曝を受けないように,遮蔽,機器の配置,放射性物質の漏洩防止,換気等所要の放射線防護上の措置を講じた設計であること。

 指針57. 放射線管理施設
 原子力発電所は,従事者を放射線から防護するために,放射線被曝を十分に監視及び管理するための放射線管理施設を設けた設計であること。
 また,これらの管理施設は必要な情報を制御室又は適当な管理場所に,通報できる設計であること。

 指針58. 放射線監視
 原子力発電所は,敷地周辺の放射線を監視するため,通常運転時,運転時の異常な過渡変化時及び事故時において,少なくとも次の場所を適切にモニタリングできる設計であること。
(1) 格納容器雰囲気
(2) 放射性物質の放出経路
(3) 原子力発電所の周辺
 解   説 (略)


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