第8章 放射線利用
1 放射線利用の動向

(1)食品照射

 食品に放射線を照射し,輸送及び貯蔵中の腐敗,虫害及び発芽等の防止,保存期間の延長,食品の加工適正の向上や改質を行うことは,食品流通の安定化及び食生活の改善を図る上で,大きく寄与するものと期待されている。
 原子力委員会は,昭和42年9月,食品照射の実用化を促進すべく,その研究開発を原子力特定総合研究に指定し,食品照射研究開発基本計画を策定した。これに基づき現在,国立試験研究機関,日本原子力研究所,理化学研究所等において研究開発が進められている。
 この研究開発の推進に当たっては,各実施機関の関係者,学識経験者及び関係行政機関の関係者からなる「食品照射研究運営会議」を原子力局に設置し,研究計画の調整,成果の評価等を行い,総合的な研究開発が進められるよう図っている。
 食品照射に関する研究は,馬鈴薯,玉ねぎ,米,小麦,ウインナーソーセージ,水産ねり製品,みかんの7品目を対象品目として行われてきた。
 馬鈴薯については所期の成果を達成し,昭和47年8月,放射線照射が許可になった。これを契機に農林省では「農産物放射線照射利用実験事業」として馬鈴薯の生産地照射を取り上げた。この事業として北海道の士幌町農業協同組合が日本原子力研究所の技術指導のもとに施設の建設に着手し,昭和48年12月に完成,直ちに操業に入り昭和51年度は約1万5千トンの照射が行われた。これらの馬鈴薯は4月〜5月の端境期に市販され,市場価格の安定に多いに寄与している。
 その他の品目については,昭和51年度も,基本計画に従って各実施機関がそれぞれの研究テーマについて以下の様な研究開発を積極的に行ってきた。
 玉ねぎについては,実用照射線量の決定,大規模照射にとよるコンテナ貯蔵試験等を行って,実用照射技術を確立するとともに,安全性試験についても,最後の毒性試験を実施中である。
 米,小麦については,昭和51年度に引き続いて毒性試験を実施するともに照射技術に関してパッケージ連続照射の検討を開始した。
 ウィンナーソーセージについては,安全性試験の中の栄養成分の変化に関する試験を終了するとともに,毒性試験を引き続き実施中である。
 水産ねり製品については,照射効果に関する試験を終了するとともに安全性試験の中の,栄養成分の変化に関する試験及び毒性試験を実施中である。
 みかんについては,安全性試験用試料を作成するため,日本原子力研究所大阪研究所にある電子線加速器を大量照射,均一照射ができるよう改造するための検討を行った。


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