第5章 安全確保及び環境保全のための調査研究等
2 環境放射能調査

(4)環境放射能等の安全研究

① 放射能測定法に関する研究
 現在,都道府県衛生研究所等における放射能調査は,科学技術庁が制定した「放射能測定法」や「放射性ストロンチウム分析法」等の分析測定マニュアルに従って実施されているが,分析対象核種の増加,分析測定方法の進歩及び測定装置の改良等に伴い,分析測定マニュアルの改訂等が必要となる。
 このため,科学技術庁は次のように放射能分析測定法を逐次改訂し,あるいは新しく定めてきた。
 また,原子力施設周辺の放射線測定の標準化に関する対策の研究について,(財)原子力安全研究協会への委託により研究が実施された。

② 環境放射能(線)に関する安全研究
 原子力利用の本格化に伴い,国民の健康と安全を図る見地から,原子力施設に起因する放射能(線)による人体への被ばく線量の推定評価及び影響に関する研究は,ますます重要となってきている。
 低線量放射線の人体への影響に関する研究は,昭和51年8月に取りまとめられた環境放射能安全研究年次計画に沿って放射線医学総合研究所を中心に,国立遺伝学研究所,農業技術研究所放射線育種場,日本原子力研究所等において実施されている。

 放射線医学総合研究所では,低線量及び低線量率被ばくの人体に対する放射線障害の危険度を推定する上で重要な晩発性の身体的影響及び遺伝的影響並びに被ばく形式の特異性からみて特に内部被ばくの障害評価の3つの研究に着目し,特別研究に指定して研究を実施しており,更に,施設の整備として,現在,晩発障害実験棟の建設を進めている。
 国立遺伝学研究所では,遺伝子の損傷と再生,体内にとりこまれた放射性同位元素による誘発突然変異及び変異体の検出の効率化を図る研究等の基礎的研究を行っている。
 農業技術研究所放射線育種場においては,高等植物における突然変異及び染色体の感受性に関する研究を行っている。また,(財)原子力安全研究協会では,原子力平和利用委託研究により放射線発ガン誘発機構の解明及び放射線障害の検出技術の確立に関する研究を実施している。
 日本原子力研究所では,放射性ヨウ素の環境における挙動,線量目標値に対する自然放射能の弁別測定法の開発,被ばく線量評価コードの開発等を実施した。
 低線量放射線の人体への影響に関する研究及び被ばく線量の推定評価に関する研究を含め,環境放射能(線)の安全研究について,各研究機関の間に有機的連携を保ちつつ,総合的体系的な観点に立ってこれを推進するため,昭和50年7月原子力委員会に環境放射能安全研究専門部会が設置された。
 同専門部会は,総合,環境,影響の3つの分科会を設け,環境放射能安全研究の計画的総合的推進方策等について検討を行ってきたが,昭和51年8月環境放射能安全研究年次計画を取りまとめた。
 現在,この計画に従って調査研究を実施している。


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