第2章 核燃料サイクル
5 再処理

(2)再処理施設の安全確保

 茨城県東海村に建設された動力炉・核燃料開発事業団の東海再処理施設は,昭和50年9月4日からウラン試験を第一次試験(50.9.4~51.11.29),第二次試験(51.11.30~52.1.31),第三次試験(52.2.1~52.3.4)にわけて実施した。また,ウラン試験終了後に行う使用済燃料を用いた本格的な試運転(ホット試験)に入るための手続きとして,原子力委員会は,「低レベル廃液の海への放出に係る詳細な審査について」及び「ホット試験に係る安全性について」の審査を行い,「安全性は十分確保し得るものと認める。」旨の答申を昭和52年5月20日に行った。それを受けて,内閣総理大臣から動力炉・核燃料開発事業団理事長あて同主旨の内容及びホット試験計画に基づいてホット試験を実施することは差し支えない旨の指示が,昭和52年7月12日に行われた。
 また,変更認可申請のあった「東海事業所再処理施設保安規定」を同日付けで認可した。その後,昭和52年7月15日に日本原子力研究所から第1回目の使用済燃料の搬入が行われ,8月29日までに計18回にわたり4.1トン(金属ウラン換算)の搬入が完了した。今後引続き,東京電力(株),関西電力(株)から搬入が行われる予定となっている。
 一方,日米原子力交渉については,9月12日,ワシントンにおいて,共同声明の発表と日米原子力協力協定第8条C項による共同決定の署名が行われた。これを受けて,内閣総理大臣から,動力炉・核燃料開発事業団理事長あて,せん断及び溶解を開始して差し支えない旨の指示が9月13日行われた。
 この指示に基づき,9月22日,宇野科学技術庁長官の立合いの下で,使用済燃料のせん断が開始された。

① ウラン試験の結果の評価
 核燃料安全専門審査会再処理部会においてウラン試験の結果の評価を行い,ウラン試験は各工程における操作性と安全性の確認及び再処理施設運転要員の訓練等について,それぞれ所期の目的を達成し,ホット試験に入る基盤が整ったものと認めた。
 以下に試験の概要を示す。
(i) 第一次試験では各装置,機器等の作動の確認と,特性に関する試験及び各工程の処理能力,ウラン損失量等性能に関する試験が行われ,一応の成果が得られている。この試験期間中に,幾つかのトラブルが発生し,このうち,特にプルトニウム溶液蒸発缶及び脱硝工程におけるウラン溶液の漏洩については,その原因の究明と必要な対策を講ずるための試験が綿密に行われ,その結果,必要な手直し改造が行われた。
(ii) 第二次試験では,第一次試験中に行われた手直し改造部分のうち,①プルトニウム溶液蒸発缶,②ウラン溶液蒸発缶,③脱硝塔,④酸回収蒸発缶及び酸回収精留塔,並びに⑤低放射性廃液蒸発缶について再試験が行われ,良好な結果が得られた。
(iii) 第三次試験では,せん断,溶解,分離,精製,廃棄物処理等の工程を連続的に作動させ,各工程が有機的かつ円滑に作動すること並びに燃料の受入れ及び貯蔵工程の操作が円滑に行われること等が確認され,満足すべき結果が得られた。

② ホット試験開始前の安全性の確認
 ウラン試験終了後,実際の使用済燃料を用いた本格的な試運転(ホット試験)が実施されているが,このホット試験開始までには,昭和50年2月25日の原子力委員会決定「動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設の安全性の確認に係る手続きについて」に基づき,ホット試験に係る試運転計画について安全性の確認を行うとともに,昭和41年7月7日の原子力委員会決定に基づき,低レベル廃液の海への放出に係る詳細な審査を実施する等の措置を講ずることとしており,これらの措置によって再処理施設の安全の確保に万全を期することとしていた。
 このうち,低レベル廃液の海への放出に係る詳細な審査については,昭和50年7月から審議を開始しており,「再処理施設安全審査専門部会」の施設関係分科会及び環境関係分科会においてそれぞれ施設面及び環境面の調査検討を進め,更に,この審査は「核燃料安全専門審査会」再処理部会に引き継がれ,同部会において調査検討を進めてきた。
 その結果,低レベル廃液の海への放出に伴い,周辺公衆が受ける被ばく線量は,昭和44年の再処理施設の設置に係る安全審査において評価した線量(12ミリレム/年)を更に下回り(6ミリレム/年)安全上問題のないことを再確認した。それを受け核燃料安全専門審査会は,再処理施設からの低レベル廃液の海への放出に係る安全性は,十分確保し得るものと認める旨の答申を昭和52年4月25日原子力委員会に行った。
 また,ホット試験に係る試運転計画についての安全性の確保も核燃料安全専門審査会再処理部会で検討を進めてきた。
 審査は,試験に係る工程試験の項目,内容確認事項等が試験の目的に照らし,妥当なものであるかの確認及び試験を実施するに当たって,従業員等の被ばく管理,放射性廃棄物の管理,周辺環境への影響について問題はないと判断できる対策が講じられていることの確認を行い,その結果,ホット試験に係る試運転計画は妥当なものであり,それに基づいて試験を行うことは安全上支障がないものと認められる旨,昭和52年4月25日答申を行った。
 ホット試験の概要は以下のとおりである。

 ホット試験の概要

1. ホット試験実施予定期間
 約12カ月間まず,JPDR燃料の搬入を行うことによってホット試験を開始した。
2. ホット試験に使用する使用済燃料
 JPDR燃料              約 4.1t BWR(東電福島1)燃料        約14.4t PWR(関電美浜2)燃料     約16.0t計               約34.5t以上のうち,実際に溶解する量は約27tの予定
3. ホット試験の方法の概要
 基本的にはウラン試験の時と同じであるが,ホット試験は実質的に再処理施設の安全性及び性能を最終的に確認するための試運転であるので,工程ごとの性能等の確認はもとより,施設全体の性能等もチェックする必要があるので,次の事項の確認を行う。
(1) 再処理施設の処理能力
(2) 定常状態への到達時間及び押し出し時間
(3) 製品中の不純物の量
(4) 定常処理時の製品回収率
(5) 核燃料物質の物質収支及び不明物質量(MUF)の概略値
(6) 大気及び海中に放出される放射性物質の濃度及び量
(7) 再処理施設の各区域の空間線量率並びに空気中及び水中の放射性物質の濃度。また,ウラン試験においては第一次試験,第二次試験及び第三次試験という段階的な手順を踏んでいるが,ホット試験においても, JPDR燃料,BWR燃料及びPWR燃料と燃焼度の低い順に段階を追って試験が進められる予定である。
 なお,本格操業開始前には,更に原子力委員会において,ウラン試験及びホット試験の結果を総合的に評価して,安全性の確認を行うこととしている。


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