第3章 原子力安全の確保

第2節 原子力安全委員会の設置と安全規制の一貫化

 原子力の開発利用の進展とその重要性の認識が深まるにつれ,原子力行政に対する国民の要求も多面化してきている。
 このような中で,原子力行政懇談会において,昭和50年12月原子力安全委員会の設置及び安全規制の一貫化を内容とする.「原子力行政体制の改革,強化に関する意見」(中間取りまとめ)が取りまとめられた。
 原子力委員会は,この意見を踏まえ,当面の措置として,関係省庁が設計工事計画以降の認可等を行うに当たって原子炉安全専門審査会において意見を述べること等によって安全規制に実質的一貫性を持たせることとした。
 その後原子力行政懇談会は,公開ヒアリングのあり方,環境放射線モニタリング業務のあり方等について審議を行い,昭和51年7月最終意見を内閣総理大臣に提出した。
 政府としては,原子力に対する国民の一層の理解と協力を得て原子力開発を進めていく上で,原子力の安全確保の体制を強化することは,不可欠の措置であるとの判断のもとに,概賂以下の内容のごとく原子力行政体制を改革,強化することとし,「原子力基本法等の一部を改正する法律」を昭和52年2月に国会に提出したが未だ審議中である。
① 原子力安全委員会の設置
 原子力の安全確保体制を強化するため,原子力委員会が有していた開発と安全確保に関する機能を分離し,新たな安全確保に係る事項を所掌する原子力安全委員会を設ける。後述の規制の一貫化により,各行政庁がそれぞれ原子炉の設置許可を行うが,行政庁は設置許可を行うに際し,その安全性につき,原子力安全委員会の意見を聞くことが義務付けられる。これに従い,各省庁は,まず第一次的に安全審査を行ってその結果を取りまとめて安全審査報告書案を作成し,これを原子力安全委員会に提出して再審査(ダブルチェック)を受ける。これらの各省庁は,原子力開発利用を推進する立場にもあるため,原子力安全委員会が再審査することによって安全の確保に万全を期し,国民の不信感が生じることのないようにするものである。
 また,原子力安全委員会は,原子力政策のうち安全規制に関する事項を企画,審議,決定することとされており,安全審査指針の策定等を横断的立場に立って行う。
 なお,原子力安全委員会は,国民との積極的な意思の疎通を図るとの観点から,公開ヒアリング等を開催して地元関係者の生の声を聴取することとしているほか,原子力安全に関する年報,月報等の刊行を行うことにより,広く安全に関する情報を公開し,国民の理解に資することとしている。
② 安全規制の一貫化
 原子力安全行政に関する批判の多くが,基本的安全審査から運転管理に至る一連の規制行政に一貫性が欠けている点に向けられていることにかんがみ,安全規制行政の一貫化を図る。すなわち内閣総理大臣が全ての原子炉につき設置許可を行い,その後の規制を通商産業大臣,運輸大臣等が行う現在の体制を改め,試験研究用原子炉及び研究開発段階にある原子炉については内閣総理大臣,実用発電用原子炉については通商産業大臣,実用舶用原子炉については運輸大臣が,それぞれ一貫して担当することとしている。


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