第2章 原子力開発利用をめぐる国際情勢と我が国の進路
第3節 我が国の進路

2 自主技術開発の強化促進

 我が国のように資源の乏しい国が,原子力の開発利用を進めていくためには,自主技術開発を強化促進していくことが必要である。
 また,自主技術の蓄積は,原子力開発利用にとっての大前提である安全確保の面で国民の期待に応えることとなる。
 更に,我が国が国際社会の一員として貢献していく上からも自主技術に期待されるところは大きい。すなわち,核融合等,開発に膨大な資金と期間を要する分野においては,それぞれの国が協力してその開発を効率的に進める傾向が一段と強くなっており,このような協力に積極的に参加していくためにも,自主技術が必要である。
 原子力委員会は,我が国の原子力開発が諸外国に比して遅れて着手された事情もあり,その初期においては,進んだ技術を導入し,技術基盤の確立を図ることに重点をおいてきたが,近年の原子力開発利用の進展に応じ,政府及び民間における新型炉,ウラン濃縮等原子力各分野の自主技術開発を推進してきたところである。
 これらが,それぞれ新しい段階を迎えた今日,更に開発を進展させるためには一層多額の費用を要するものと考えられる。したがって原子力委員会としては,技術開発の計画的・効率的遂行はもとより所要の開発資金の確保によって今後の技術開発の一層の推進を図ることとしている。その際,先に述べた新しい国際情勢に適切に対処していくため,核燃料サイクル分野における技術開発が極めて緊急と考える。
 この分野の技術開発課題としては,
① 濃縮ウラン確保のため,昭和52年8月に着工したウラン濃縮パイロットプラントの建設の推進等,遠心分離法によるウラン濃縮技術の確立
② 使用済燃料の再処理のため,動力炉・核燃料開発事業団東海再処理施設での運転経験の蓄積。なお,あわせて混合抽出法に関する研究開発の実施。
③ 放射性廃棄物処理処分のため,廃棄物の固化技術,処分技術等の開発の推進
④ 高速増殖炉実験炉「常陽」の運転試験と原型炉「もんじゅ」の建設の促進
⑤ ウラン資源の効率的利用のため,新型転換炉「ふげん」の運転及びその開発の推進
⑥ プルトニウム利用のため,安全性を含めての研究開発及び実証試験の推進
⑦ 原子力施設及び核物質に関する保障措置及び核物質防護技術のより一層の改善のための研究開発の推進
等を,推進する必要がある。

 また,軽水炉に関しては,従来から導入技術を基礎として,その消化・吸収,改良等によって自主技術の蓄積に努め,実用化されてきている。しかしながら,故障等が発生した場合でも迅速かつ的確にこれに対応していくこと等安全性,信頼性はもちろん経済性の向上の見地からも,なお一層の自主技術の蓄積が必要であると考えられる。このため,第一には,炉の改良,標準化等を民間産業を中心として進めてきているところであるが,今後の一層の努力を期待しているところである。また,第二には,軽水炉の安全性試験研究について,日本原子力研究所を中心に進められている原子炉における反応度事故,冷却材喪失事故などに関する工学的安全性研究,また原子力工学試験センター等を中心とした信頼性各種実証試験を核として,安全基準の一層の精密化及び安全性の実証を目的としてその推進を図ってきているが,今後,なお一層,この分野の研究開発を進める必要がある。

 また,原子力の熱エネルギーの直接利用を目的とした高温ガス炉の開発は,エネルギー政策上重要であるので,その推進を図る必要がある。
 更に,核融合の分野では,我が国においては,従来から,大学における基礎研究並びに日本原子力研究所を中心とするトカマク型に重点を置いた研究開発が,精力的に進められ,米国,ソ連等の諸国と肩をならべる程の技術を有するに至っている。この技術蓄積を基盤として,トカマク型臨界プラズマ試験装置(JT-60)の建設を推進する必要がある。


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