第2章 原子力開発利用をめぐる国際情勢と我が国の進路
第2節 日米原子力交渉の経緯とその意義

2 共同声明及び共同決定の内容とその意義

 日米両国は,昭和52年9月12日,日米原子力協定に基づき,東海再処理施設の運転開始に当たり「合衆国産の特殊核物質の再処理についての日米原子力協定第8条C項に基づく共同決定」を行い,同再処理施設における当初2年間,99トンの使用済燃料の再処理について,同協定第11条の保障措置が効果的に適用されることを確認した。本共同決定に当たり,両国はこの共同決定に至る経緯にかんがみ,米国は原子力の開発が我が国のエネルギー上の安全保障及び経済発展にとって重要であることを認め,その結果,次のようなことを相互に了解した旨を共同声明とした。

 共同声明の要旨
 ① 動力炉・核燃料開発事業団東海再処理施設を2年間,99トンまで,既定のプルトニウム単体抽出の方法で運転する。
 ② 我が国は,硝酸プルトニウムを酸化プルトニウムにするための転換施設の建設を2年間見合わせる。一方,米国は,我が国の 
  新型炉等の研究開発用プルトニウムの供給確保を保証する。
 ③ この2年間,再処理施設内の運転試験設備(OTL: Operational Test Laboratory)等により,混合抽出法の実験を行い,その結 
  果を国際核燃料サイクル評価に提供する。
 ④ 2年間の運転終了後,運転試験設備の実験結果及び国際核燃料サイクル評価検討の結果に照らして,日米両政府によって 
  混合抽出法が技術的に実用可能であり,かつ,効果的であると合意された場合には,東海再処理施設を混合抽出法に改造する。
 ⑤ プルトニウム分離のための新たな再処理施設については,2年間,主要な措置をとることを見合わせる。
 ⑥ 軽水炉へのプルトニウムの商業利用を2年間延期する。
 ⑦ 国際原子力機関は,常時査察を含む保障措置を十分に適用できる。
 ⑧ 我が国は,本施設におけるセーフガーダビリティ及び核物質防護措置を改善する。
 ⑨ 我が国は,米国,国際原子力機関と協力して保障措置関連機器の試験を実施し,その結果を国際核燃料サイクル評価に提供 
  する。

 この結果は,我が国の基本的な立場を貫き,また,現行の日米原子力協定の枠組を越えた新たな権利義務関係を生ぜしめることがなかったという意味で満足できるものであった。
 これとともに両国は,今後原子力平和利用と核不拡散とを両立させるために一層の努力をし,そのため国際原子力機関の強化及び国際核燃料サイクル評価について共同して貢献していくことが確認された。
 なお,共同決定における「2年間」は,国際核燃料サイクル評価の行われる期間を考慮した結果である。
 今回の日米原子力交渉の結果,自主的な核燃料サイクルの確立にとって不可欠な再処理施設の運転が始まることとなった。また,高速増殖炉開発に関しても,実験炉「常陽」の出力試験を計画どおり進め,原型炉「もんじゅ」の開発を進めるとの我が国の基本的立場を確保することができた。
 これらの成果に加えて,前述したウラン濃縮パイロットプラントの建設着手並びに第2再処理工場に関して,国内法制の整備,立地地点の選定等を進めることによって,我が国の核燃料サイクル確立に向かって大きく前進することとなる。


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