第9章 原子力産業
2 核燃料加工

 現在,我が国で稼動中の原子力発電所は,日本原子力発電(株)の東海発電所の1号炉を除き,すべて軽水炉であり,今後も当分は軽水炉中心に建設が進められるものと考えられる。これに伴って低濃縮ウラン燃料の需要は急速に増大すると見込まれる。我が国の核燃料加工は核燃料サイクルのうちで最も事業化が進んだ分野であり,その加工能力も現在のところ十分需要をまかなえるものである。しかし,加工分野に進出して日も浅く,十分な実績がないため,ジルカロイ被覆管等の重要な部品についてはようやく国産品が最近使用され始めたところである。
 濃縮されたUF6からUO2の粉末への再転換については三菱原子燃料(株)の東海製作所(年産約360トン,UO2換算)が操業しており,住友金属鉱山(株)の東海核燃料工場(年産約240トン,UO2換算)も処理能力を有している。PWR用燃料については,その大部分を三菱原子燃料が再転換しているが,BWR用燃料については,現在のところ米国GE社で再転換されている。住友金属鉱山(株)はこれまで原子燃料工業(株)において成型,組立加工されるPWR用燃料の再転換を行った実績があるが,現在,BWR用燃料の再転換を行うための準備を進めている。UO2から最終製品である燃料集合体への成型,組立加工は,BWR用燃料に関しては,日本ニュークリア・フュエル(株)がGE社から導入した技術をもとに横須賀工場(年産490トン,U換算)を操業中である。PWR用燃料については,三菱原子燃料(株)がWH社から導入した技術をもとに東海製作所(年産420トン,U換算)を操業中である。

 このように,軽水炉燃料加工事業は,外国資本に直結した原子炉系メーカにより2分された状態にあったが直接外資との結びつきを持たない原子燃料工業(株)(住友電気工業(株)と古河電気工業(株)の両社の加工部門の合併により設立)は,熊取製造所において,燃料加工の研究開発を進め,昭和50年8月に軽水炉燃料の加工について事業の許可を得ている。
 ジルカロイ被覆管については,これまで大部分を輸入品に頼っているが,我が国においても,神戸製鋼所(株),住友金属工業(株),三菱金属工業(株)がジルカロイ被覆管の生産設備を有しており,輸出した実績もあるが,今後この面での国産化の進展が期待される。


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