第9章 原子力産業
1 原子炉機器産業

 原子力産業は新しい産業であり,その技術は機械,電気,化学,金属,土木等きわめて広範な既存技術との融合からなっている。そのため,我が国の原子力産業は在来の企業が原子力部門を設け,資本系列を通して原子力産業グループを形成している。現在次の5グループにわかれている。

 日本原子力産業会議の調査によれば,鉱工業の原子力関係支出高は昭和32年度の32億円,43年度の387億円,49年度の3,070億円と急激な伸びをみせているが,研究支出高は同じ年度で15億円,40億円,205億円であり,その比率は低下をみせている。
 軽水炉技術については,東芝,日立がゼネラル・エレクトリック(GE)社からBWRを,三菱がウェスチングハウス(WH)社からPWRを技術導入し,,製造技術の習得に努めてきた。軽水炉の初期のものについてはGE,WH社が主契約者となり,国内メーカーはその下請として機器の製作に当っていたが,2号基以降のものは日本のメーカーが主契約者となって建設を行っている。しかし,現在建設の進められている100万KW級の大型原子力発電所では海外メーカーが主契約者となっている。

 一方,原子炉の国産化状況についてみると,初期の40~50%から出発して,最近では95%までに達しており,次第に国産化体制が整ってきており,従来国産化されていなかった原子炉の安全上とくに重要な機器で,高度の信頼性や実証性が要求される再循環ポンプ,バルブ等についても,一部国産化の域に達している。
 これまでの建設経験により,我が国の原子炉機器産業はかなりの水準に達したが,西ドイツの軽水炉技術にみられるような独自のシステムを開発するまでには至っていない。原子力開発は,国産化率の上昇だけではなく,自ら技術開発を行えるようになってはじめて順調な発展が期待できるものである。軽水炉の改良,標準化については通商産業省から本年4月に中間報告がだされている。報告書にも述べられているように,メーカーにおいては,電気事業者とも協力し,改良標準プラントの研究開発を進める必要がある。
 軽水炉改良標準化調査中間報告の概要は次のとおりである。
① 改良標準化の必要性
・従業員の被ばく低減対策
・自動化,遠隔化などに基づく保守点検作業の的確化
・機器信頼性の向上及び定期検査期間の短縮
 を図るため,自主技術に基づく改良,標準化を進める必要がある。
② 改良標準化の考え方と具体的事項
 当面の標準化に当っては,現在すでに適用されている改良に加え,ここ1,2年間の技術開発により確信をもって適用し得るものを採用する。
 具体的事項としては,
 BWRについては,
・格納容器内作業性の向上・・・・・・スペースの拡大,形状の改良,機器配置の改良
・保守点検性の改良
・クラッド発生防止と除去
 PWRについては,
・格納容器内作業性の向上・・・・・・スペースの拡大,機器配置の改良
・保守点検性の改良
 があげられるほか,定期検査の合理化,機器信頼性の向上をはかる。
③ 標準設計
 標準プラントの出力としては80万KW級と110万KW級の2種類とし,当面は原子炉蒸気発生設備を中心に標準化を進める。


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