第7章 放射線利用
2 放射性同位元素等の取扱いに係る安全管理

(1)放射性同位元素等の許可及び届出

 放射性同位元素の取扱いに伴う安全性の確保については, 「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」(放射線障害防止法),労働安全衛生法,医療法,薬事法等に基づき,所要の規制が行われている。このうち放射線障害防止法による規制の概要は以下のとおりである。
① ○放射性同位元素又は放射線発生装置は使用しようとする者
○放射性同位元素を業として販売しようとする者
○放射性同位元素又は放射性同位元素によって汚染されたものを業として廃棄しようとする者
 は,科学技術庁長官の許可を受けなければならない。(密封された放射性同位元素の1工場又は1事業所当たりの使用総量が100ミリキュリー以下の場合には届出)
② 取扱いを開始する前に,放射線障害予防規定の作成・届出,放射線取扱主任者の選任,届出をしなければならない。
③ 取扱いに当たっては,総理府令で定める使用,詰替,保管,運搬(一部の運搬については,運輸省令)及び廃棄の技術上の基準に従って行うとともに,使用,保管等の記帳,従業員の被ばく測定等を行わなければならない。
 これら使用の許可や販売,廃棄の事業の許可に当たっては,事業所等から申請された使用,詰替,貯蔵,廃棄施設等の施設などの内容について,同法に規定する許可基準に適合しているか否かを厳正に審査したのち,適合しているものについて許可(届出の受理)をしている。
 このような規制により,作業従業者の安全を図るばかりでなく,線量率の測定の義務づけや排気,排水中の放射性同位元素の濃度を規制することにより事業所外の一般公衆の安全の確保を図っている。
 これら事業所は,教育機関をはじめ研究機関,医療機関,民間企業等多岐にわたり,その数も年々増加している。使用事業所については,昭和50年度には新たに118事業所が使用の許可を受け,165事業所から使用の届出があった。また,使用の廃止等の届出が許可事業所から78件,届出事業所から82件行われた結果,昭和50年度末の使用事業所数は3,334となっている。
 販売事業所は,昭和50年度には11事業所が許可され,5事業所から廃止の届出が行われた結果,合計142事業所となり,廃棄事業所は前年度と同じ6事業所である。
 なお,昭和50年度末の使用,販売,廃棄事業所の総計は3,482事業所となっている。

(2)放射性同位元素等取扱事業所に対する立入検査

 放射線障害防止法では,科学技術庁長官は,同法又は同法に基づく命令の実施のため必要があると認めるときは,使用事業所等の放射線取扱施設に放射線検査官を立ち入らせ,必要物件の検査等を行わせることができることになっている。この規定に基づき,使用事業所等への立入検査が毎年行われているが,昭和50年度には401事業所について立入検査が行われた。

(3)放射性同位元素等取扱事業所における紛失等の事件

 放射性同位元素等に係る事故,被ばく等の事件は,昭和50年度には,病院における紛失2件,運搬途中の交通事故2件が主な事件で,その他のものを含め発生した事件の概要は,次表のとおりである。
 これらの事件については,科学技術庁は,厚生省等とも連絡をとりつつ,立入検査等所要の措置を講じた。

(4)放射性同位元素等の安全管理対策の実施

 近年放射性同位元素や放射線発生装置の利用が著しく普及拡大しているが,その取扱いに係る安全の確保については,昭和50年度は, 「放射線障害防止対策要綱」(昭和49年8月策定)に基づき,科学技術庁において関係予算の増額,関係職員の増員(2名)を行い,放射線障害防止法の許認可等の厳正な審査,立入検査の効果的な実施等行政運営の改善強化に努めるとともに,関係各省庁の協力を得て次のような施策を実施した。
① 立入検査等監督指導の強化と「放射性同位元素の盗難防止対策要綱」(昭和50年3月策定)の徹底並びに関係9省庁からなる「放射線障害防止関係省庁連絡会議」(昭和49年5月設置)による関係行政の円滑かつ効果的な実施
② 自主的安全活動を進めるため,関係業界27団体により構成されている「放射線障害防止中央協議会」(昭和49年10月設立)と共同しての放射線安全管理講習会の開催(東京,大阪,仙台)と「フィルムバッジによる外部被ばく線量管理の手引き」等の作成,配布。
③ 科学技術庁のおける京浜地区震災対策や非破壊検査専業事業所の実施
④ 放射線審議会基本部会におけるICRP勧告の検討のほか,放射線障害防止法関係法令の基本的な見直しと解釈運用の合理化及び「放射線取扱主任者実態調査」と「放射性廃棄物(RI関係)実態調査」の実施
 なお,これらのほか,関係各省庁の実施した主な施策は,次のとおりである。
① 人事院 国立事業所について設置した「各省庁放射線障害防止対策連絡会議」の開催及び国家公務員に係る放射線障害防止の強化
② 警察庁 警察職員に対するアイソトープ関係研修の実施と放射性物質運搬車輛の取締り等の実施
③ 文部省 大学における放射線の安全管理に関して,有識者の会議を設けて検討し,その結果を国公私立大学長等へ通知する等大学における放射線安全管理の改善,強化
④ 厚生省 医療監視員等に対する放射線障害防止関係研修・講習会等の実施と放射性医薬品等の問題の検討開始
⑤ 労働省 非破壊検査の安全確保に関し,ガンマ線透過写真撮影作業主任者制度の創設,ガンマ線照射装置構造規格の制定等関係法令の整備,関係事業所への立入検査の実施等,及び労働基準監督機関職員に対する放射線障害防止関係研修の実施


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