第5章 新型炉と核融合の研究開発
2.高速増殖炉

 我が国における高速増殖炉の開発は,新型転換炉と同様に,動力炉・核燃料開発事業団が,内閣総理大臣の定めた「動力炉開発業務に関する基本方針」及び「同基本計画」に従って実施しており,炉型としては,プルトニウムとウランの混合酸化物燃料を用いるナトリウム冷却型高速増殖炉を選定している。
 高速増殖炉は,発電に消費する以上に核分裂性物質(プルトニウム)を生産するという点で,核燃料の有効利用における意義は極めて高く,米国をはじめとする先進諸国がその開発を鋭意進めている。

(1)実験炉の建設

 実験炉は,我が国初のナトリウム冷却型高速増殖炉であり,この設計,建設,運転を通じて高速増殖炉に関する技術的経験を蓄積するとともに,完成後は,燃料,材料等の照射施設として利用することを目的としている。
 実験炉については,昭和45年2月,原子炉等規制法に基づく設置が許可され,茨城県の大洗工学センターにおいて建設を進めてきた。昭和48年度までに土木建設工事を終了し,昭和49年末には機器据付けを完了し,昭和52年度当初の臨界を目標に,昭和50年1月から総合機能試験を実施しており,本年2月からはその最終段階であるナトリウム充填状態での機能試験を開始した。

(2)原型炉の設計

 原型炉は,その設計,建設,運転の経験を通して,高速増殖炉の性能,信頼性等を確認し,さらに将来の実用炉の段階における発電炉として経済性の目安を得ることを目的としている。
 原型炉の設計については,昭和43年度に予備設計を行い,さらに昭和44~47年度に第1次~第3次設計を行い,昭和48年度以降は,その後の研究開発の成果等を反映させるための調整設計を継続して実施している。

(3)研究開発

 高速増殖炉の研究開発は,大洗工学センターのナトリウム流動伝熱試験装置,50MW蒸気発生器試験施設等の各施設を中核として実施されているほか,日米,日英,日独の協力が動力炉・核燃料開発事業団を当事者として行われており,日米については本年4月に,日英については昭和50年12月に,日独については本年5月に,それぞれ開発の進展を取り入れて協力協定の改訂が行われた。
① 炉 物 理
 日本原子力研究所に設置されている高速臨界実験装置(FCA)を用いた原型炉炉心の部分モックアップ実験を前年度に引き続き実施したほか,高速炉炉心核設計法の確立のためのバーンアップ計算法の開発,炉定数の作成と評価,核データの評価等を実施した。
② ナトリウム技術
 ナトリウム中での構造材料の特性を調べるため,材料試験ループ等を用いて,質量移行試験,各種クリープ試験等を行った。
 また,ナトリウム流動伝熱試験装置を用いて,各種機器の耐久試験,確性試験を行ったほか,ナトリウム分析法,ナトリウム純度管理技術の開発等を実施した。
③ 構造機器,部品
 実験炉用構造機器については,ナトリウムポンプループによる1次系ポンプの耐久試験等を行った。
 原型炉用構造機器については,燃料交換機,制御棒駆動機構等のモックアップ試験,バックアップ炉停止機構の試作,供用期間中検査装置の試作開発等を実施した。
④ 計測制御
 原型炉において使用する検出器,回路系の開発を中心として,炉内外中性子検出器,破損燃料検出系の試作,試験等を行った。
⑤ 燃料・材料
 フランスのラプソディー炉等による燃料照射を引き続き行うとともに,燃料ピンの製造技術の開発,照射燃料試験施設(AGF)等における照射後試験等を実施した。
⑥ 安 全 性
 大洗工学センターの高速炉安全性試験室におけるナトリウム過度沸騰試験等の炉内安全性研究を行ったほか,1次系配管の破断及び信頼性に関する研究,放射性希ガス除去回収技術の開発等を実施した。また,国際共同研究である冷却材事故及び反応度事故模擬炉内試験の準備等を実施した。
⑦ 蒸気発生器
50MW蒸気発生器1号機の解体検査を行い,引き続き2号機を据え付け,本年1月より試験運転を実施中である。
 また,ナトリウム―水反応試験では,大リーク及び小リークのナトリウム―水反応試験を継続して実施したほか,新設の蒸気発生器安全性総合試験装置での大規模ナトリウム―水反応試験を2回実施した。
⑧ 再 処 理
 高速増殖炉燃料に対して,世界の主流を占める湿式再処理法を適用するための研究を進めている。
 なお,前述の「新型動力炉開発専門部会」においては,高速増殖炉の原型炉に関し検討を行い,原型炉の建設計画は妥当であるとしている。


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