第4章 安全確保及び環境保全のための調査研究
1 原子炉施設等の安全研究

 軽水炉に関する安全研究は,日本原子力研究所を中心として,国立試験研究機関及び原子力平和利用研究委託費による民間機関への委託研究によって実施されており,また,新型動力炉に関する安全研究は,動力炉・核燃料開発事業団のそれぞれの炉の開発計画の中に位置づけられて実施されている。

 日本原子力研究所では,軽水炉安全研究の中心的実施機関として主として冷却材喪失事故,反応度事故等における現象の解明に関する研究と,これらの事故時の安全評価のための安全解析コードの解析及び原子炉燃料,材料の安全性に関する研究を行っている。
 冷却材喪失事故に関する研究については,昭和45年度から昭和47年度までROSA-I計画として,冷却材喪失事故試験装置(ROSA:Rig of Safety Assessment)を用いて実験を行い,原子炉一次冷却系配管破断事故時の冷却材喪失過程の諸現象について解明を行った。昭和48年度からはROSA-II計画として冷却材喪失事故時の非常用炉心冷却系(ECCS:Emergency Core Cooling System)の効果に関する実験研究を行っている。
 反応度事故に関する研究としては,反応度異常時の炉内燃料の挙動,燃料破損に伴う破壊エネルギーの発生機構等について核的安全性の実証研究を行うための原子炉安全性研究炉(NSRR:Nuclear Safety Research Reactor)が昭和50年6月,臨界に達し,非照射燃料に関する破壊試験を開始した。
 また,現在,軽水炉燃料の健全性,信頼性の向上を図るため,実用燃料の照射後試験を行うことを目的とした実用燃料照射後試験施設の建設を進めている。

 安全研究に必要な施設の大規模化に伴ない,最近,国際的な分担・協力が進んでいるが,我が国も,昭和50年度にはOECD-NEA,OECD-IEAにおける多国間国際協力,日米,日独の二国間協力の具体化を積極的に進めており,LOFT計画調印(日米,昭和51年2月),NSRR計画/PBF計画相互協力調印(日米,昭和51年3月),専門家会議開催(日米,昭和50年11月,日独,昭和50年4月及び昭和51年3月)が行われた。また,フランスとの協力の可能性も検討が始められている。日本原子力研究所は,これらの国際協力計画の実施のための我が国の中心的機関として活動している。

 国立試験研究機関においては安全性確保に必要な基礎的研究を実施している。すなわち,科学技術庁金属材料技術研究所では原子炉用金属材料の腐食防止に関する研究,運輸省船舶技術研究所では原子炉圧力容器の内圧破壊,原子炉圧力容器用新鋼材の安全評価,亀裂波測定による非破壊検査法等に関する研究,自治省消防研究所では核燃料輸送容器の火災対策に関する研究,建設省建築研究所では動力炉用コンクリートの安全基準に関する研究等をそれぞれ行っている。
 原子力平和利用研究委託費においては,主として原子力施設の安全基準の作成又は安全評価を行ううえでの基礎資料を得ることを目的とした研究を行っている。昭和50年度には,配管系の局部的構造挙動に関する研究,原子炉材料の疲労とクリープの相互効果を考慮した構造設計基準に関する研究,使用済燃料輸送容器の海中落下時の安全性に関する試験研究等を実施し,安全基準検討のための基礎資料を得た。
 原子炉施設の安全評価に関する研究としては,二酸化ウランペレットの熱変形に対する安全性の研究,超音波探傷法による欠陥定量測定に関する基礎的研究等を行った。
 また,原子炉や再処理施設から排出される気体状,液体状の放射性廃棄物の放出低減化の研究を動力炉・核燃料開発事業団等において進めているほか,原子力平和利用研究委託費による民間研究委託によって実施している。
 動力炉・核燃料開発事業団では,新型転換炉及び高速増殖炉に関する安全研究をその開発プロジェクトの一環として実施している。新型転換炉については, 一次冷却系の破断試験による冷却材喪失現象の解明,非常用炉心冷却系の有効性の確認試験,主蒸気管破断試験事故時の諸現象の把握等を総合的に実施している。また,高速増殖炉については,再臨界事故時に炉心で発生する機械的エネルギーに対する耐衝撃構造試験,一次冷却系配管の信頼性試験,燃料破損伝播試験,バックアップ炉停止機構試験,燃料の照射試験等を進めている。


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