第3章 保障措置
3 核兵器不拡散条約(NPT)に基づく保障措

(1)核兵器不拡散条約(NPT)に基づく保障措置の概要

 NPTは,核兵器国をこれ以上ふやすことによって,核戦争の起こる危険性を少なくすることを目的として,1970年3月に発効した。
 その主な内容は,次の3項目である。
① 核兵器国は,核兵器を他国に移譲せず,また,その製造について非核兵器国を援助しないこと。
② 非核兵器国は,核兵器の受領,製造をせず,製造のための援助を受けないこと。
③ 非核兵器国は,IAEAと保障措置協定を締結し,国内の平和的な原子力活動にあるすべての核物質について保障措置を受け入れること。
 本年6月末現在,我が国を含め97カ国が批准し,締約国となっている。
 NPTを署名し,批准していない国は,エジプト,トルコ等12カ国である。
 また,主なNPT未署名国はフランス,中国,インド,ブラジル,イスラエル,スペイン,南アフリカ,アルゼンチン,パキスタン等である。
 昭和50年5月,NPTに基づきNPTを見直すための再検討会議がジュネーブで開かれ,核兵器拡散の防止と原子力の平和利用の推進を具体化する旨の宣言が採択された。
 NPTに基づく保障措置と従来の保障措置との主な相違点は次のとおりである。
① 保障措置の対象となるものは,従来は協力協定に基づき移転された核物質等であったが,NPTでは非核兵器国の平和的な原子力活動にあるすべての核物質である。
② NPT下では各国とも核物質管理制度(国内保障措置制度)を制定,維持することが義務づけられ,IAEAはこの制度の結果を検証する方法で査察を実施する。
③ 核物質の収支区域という概念を基礎に,定量的な核物質計量管理システムを導入し,査察の合理化を図り,査察による立入個所及び査察業務量を限定する。

(2)各国の動き

 IAEAは,NPT締約国との間に保障措置協定締結のための交渉を行っており,昭和50年12月末現在でカナダ,オーストラリア,フィンランド,ノルウェー等の43カ国との間で保障措置協定が結ばれている。

(3)NPT批准に対応しての我が国の体制

 我が国は,署名以来未批准のままになっていたNPTについて,昭和50年4月,その批准案件を第75回国会に提出した。本案件は,同国会及び第76回国会において,審議未了・継続審議となり,その後,本年5月,第77回国会において承認された。
 NPT下での保障措置協定については,昭和47年以降,数次にわたり,IAEAとの間で予備的な交渉を重ね,他の国又は他の国のグループに比べ不平等不利益なものとならぬよう慎重に取り組んできたが,昭和50年2月,我が国にとり実質的に不利とならない内容の合意をとりつけることができた。
 この合意の内容の特色は,我が国の計量管理制度をIAEAに最大限に活用させ,調整をはかることによってIAEAの保障措置との重複を避け,査察を合理化,簡素化することにある。
 現在,我が国はNPT下への移行に備え,国内保障措置体制の整備とくに自主査察体制の整備,独立の検証のための測定機器の整備,情報処理システムの整備等を進めている。


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