第2章 核燃料サイクル
6 核燃料物質の輸送

 海外から我が国への核燃料物質の輸送としては,発電所用低濃縮ウラン燃料の場合,完成燃料体の形で輸入されるものは極めて少なく,大部分は二酸化ウラン粉末またはシリンダー入りの六フッ化ウランの形態で輸入されている。また,研究開発用もしくは研究炉用の高濃縮ウラン,プルトニウムの場合は,それぞれ金属ウラン,プルトニウム酸化物として輸入されている。
 我が国から外国への輸送としては,我が国は現在,英国等に委託して再処理を行っているため,使用済燃料は直接発電所サイトから船舶で海外へ輸送している。昭和50年度にも,日本原子力発電(株)の東海炉及び敦賀炉から,いずれも英国原子燃料公社(BNFL)によって,英国への輸送が行われた。
 国内における核燃料物質の輸送は,年々量的に増加しつつあるが原子炉等規制法,船舶安全法等の関係法令に基づき,また関係機関の指導の下に,慎重に行われており,現在まで核燃料物質の輸送に係る事故は起っていない。
 今後,全国各地の原子力発電所が稼動し,海外再処理委託量が増加し,さらには国内において再処理施設が操業を開始する見込みなので,使用済燃料等の核燃料物質の輸送は,今後とも急速に拡大することが予想される。民間においては,このような輸送の本格化に対処するため,輸送サービス機関の準備,輸送容器の国産化等の動きが活発化しつつある。
 核燃料物質の輸送の安全を確保するためには,輸送容器の設計,輸送方法等について適切な規制が必要である。国際間の輸送については,従来から国際原子力機関(IAEA)の放射性物質安全輸送規則に従って行われており,国内輸送についても,このIAEAの規則に準じて規制が行われてきている。
 原子力委員会は,IAEAの規則が1973年に大幅に改訂されたのを契機に,放射性物質の安全輸送に関する技術的基準の再検討を行い,昭和50年1月21日,「放射性物質等の輸送に関する安全基準」を決定しており,現在,同安全基準を実施するため,科学技術庁,運輸省等において関係法令の改正,整備をはじめ,安全確保体制の整備が検討されているところである。
 なお,科学技術庁では,従来から原子炉設置者等の事業者からの申請に応じて使用済燃料等の輸送容器の設計審査を行ってきていたが,輸送容器の国産化等に対処するため,本年3月から学識経験者からなる「核燃料輸送物審査検討会」を開催し,輸送物の安全審査に係る技術的専門事項について必要に応じ助言を得るなど,審査機能の充実を図っている。
 原子力委員会は,このような関係省庁における規制体制の整備と併行して,本年4月9日に設置した「核燃料安全専門審査会」において我が国の事情に合った輸送の総合的安全対策について調査審議を行うこととしている。


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