第2章 核燃料サイクル
4 再処理

(1)再処理の需給バランス

 使用済燃料の再処理の需要量は,昭和60年度4,900万KWの発電規模に対して年間700トンU,累積で4,100トンUと見込まれている。これに対する再処理の手当としては,昭和58年頃までの分については,動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設で再処理する一方,これを上回る分は英国核燃料公社(BNFL)あるいはユナイテッド・リプロセッサーズ・GmbH(URG)との再処理契約により再処理できることとなっている。さらにこれ以降の分については,第二再処理工場の運転開始までの分は新規の海外再処理委託でまかなう必要があるため,電気事業者はこれまでもBNFLと交渉を進めてきたが,本年3月には新設されたフランス核燃料公社(COGEMA)も再処理の委託を受け入れる用意のあることを表明したので,現在この両者と契約交渉中である。
 第二再処理工場については,原子力委員会はその建設,運転を民間に期待するとの方針を示している。これを受けて,昭和49年6月,電気事業社10社により「濃縮再処理準備会」が設立され,第二再処理工場建設に関する調査検討を進めているが,建設計画は未だ具体化していない。このため,原子力委員会に設けられた「核燃料サイクル問題懇談会」において,第二再処理工場の具体化を促進するための施策について検討しているところである。

(2)再処理施設の建設状況

 動力炉・核燃料開発事業団は,昭和46年6月,茨城県東海村に我が国最初の使用済燃料再処理施設の建設を開始した。この施設は,年間210トンUの処理能力を有し,処理方式として溶媒抽出法による湿式ピューレックス法を採用している。
 すでに,主工場,廃棄物処理場,高レベル廃棄物貯蔵所等の建設工事が49年10月に完了し,化学薬品を用いた化学試験を終えて,50年9月から天然ウラン及び劣化ウランを用いたウラン試験を進めている。ウラン試験終了後,使用済燃料を用いたホット試験を行って施設の安全性及び性能を十分確認した後,昭和53年度に操業を開始する予定である。

 この再処理工場の建設に対しては,施設に関する設計及び工事の方法の認可等につき,科学技術庁長官に対して異議申立てがなされた。
 昭和49年8月には,海中放出管に関する設計及び工事の方法の認可につき,地元村議を含む住民5名から行政不服審査法に基づく異議申立てが行われ,科学技術庁長官は50年8月,理由がないとしてこれを棄却した。
 昭和50年10月には,再処理工場の保安規定の認可処分及びウラン試験の実施についての通知(いずれも昭和50年8月7日付け)に対して,周辺住民約70名から取消しを求める異議申立てが行われた。科学技術庁長官はこれらの異議申立てについて慎重に審査し,本年6月,ウラン試験実施の通知に対する異議申立てに関しては,行政処分に対してなされたものではないため不適法なものとして却下の決定をし,保安規定認可処分に対する異議申立てに関しては,異議申立ての理由がないとして棄却の決定をした。
 また,動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設への使用済燃料の搬入については,日立港及び国道245号線の利用に対し,地元茨城県及び日立市から強い難色が示されたことに鑑み,昭和49年4月,科学技術庁に「使用済核燃料輸送対策調査連絡会」を設置して,関係者による調査検討を行った。この結果,昭和52年度以降は日本原子力発電(株)東海第二発電所の付属物揚場施設を利用して使用済燃料の陸上げを行い,また,この時までに日本原子力発電(株),日本原子力研究所及び動力炉・核燃料開発事業団の敷地を通る使用済燃料輸送道路を整備することとなり,現在この道路の建設を進めている。

(3)再処理施設の安全確保

 茨城県東海村に建設された動力炉・核燃料開発事業団の再処理工場は,昭和50年9月4日からウラン試験を開始した。
 現在,昭和53年度の操業開始を目途に,引き続きウラン試験を実施中であり,ウラン試験終了後に使用済燃料を用いた本格的な試運転(ホット試験)を行う予定である。
① ウラン試験開始前の安全性の確認
 ウラン試験の開始にあたって,原子力委員会は,昭和50年2月25日の原子力委員会決定「動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設の安全性の確認に係る手続について」に基づき,再処理施設安全審査専門部会において ① 再処理施設に関する設計及び工事の主要事項, ② ウラン試験に係る試運転計画,の検討を行った。
 このうち,再処理施設に関する設計及び工事の主要事項については,「再処理施設安全審査専門部会」は耐震,しやへい関係,臨界関係,材料関係及び工程関係の4ワーキング・グループを設置して,現地調査を含めた調査検討を行った。同専門部会は,この検討の結果,再処理施設に関する設計及び工事の主要事項は,同専門部会において行った安全審査の内容に従っており,妥当なものであると認め,その旨原子力委員会に報告した(昭和50年7月7日)。
 また,ウラン試験に係る試運転計画については,再処理施設安全審査専門部会は,ウラン試験時の被ばく管理,放射性廃棄物の管理及び事故防止対策等について検討した結果,ウラン試験を実施することは安全上支障がないことを確認する一方,ウラン試験に係る試運転計画の試験項目,内容,確認事項等が妥当なものであると認め,その旨原子力委員会に報告した(昭和50年7月7日)。
 原子力委員会は,上記の専門部会からの報告を了承し,昭和50年7月22日,動力炉・核燃料開発事業団がウラン試験を実施することは適当であると認める旨の決定をした。
 さらに,再処理施設周辺の環境モニタリングについても,原子力委員会は,モニタリング計画及びモニタリング結果の総合的な評価を行うため,昭和49年12月,「環境放射線モニタリング中央評価専門部会」を設置し,調査検討を進めてきたが,昭和50年5月,同専門部会は,この再処理施設周辺のモニタリング計画及びモニタリング結果の評価方法についての審議を終了した。
 一方,放射線審議会は,科学技術庁長官から諮問のあった昭和35年科学技術庁告示第21号(原子炉の設置,運転等に関する規則等の規定に基づき,許容被ばく線量等を定める件)の一部改正(再処理施設からの低レベル放射性廃液の海洋放出に起因する許容被ばく線量を海産生物の経口摂取によるものを含めて3カ月間につき130ミリレムとするもの)について審議した結果,昭和50年6月2日,諮問案通りで差し支えない旨の答申を行った。これを受けて科学技術庁長官は,昭和50年8月5日,上記告示を改正し,昭和50年科学技術庁告示第5号として公告した。
 以上のような原子力委員会及び放射線審議会の審議検討を踏まえて,科学技術庁長官は,昭和50年8月7日,動力炉・核燃料開発事業団理事長あてにウラン試験の実施は支障がないと認められる旨通知するとともに,同事業団から認可申請のあった「東海事業所再処理保安規定」を認可した。
② ウラン試験の実施と試験中の不具合等
 以上のような安全性確認の手続きを経て,動力炉・核燃料開発事業団は昭和50年9月,ウラン試験を開始した。このウラン試験は,天然ウラン及び劣化ウランを用いて機器装置類の性能を確認するとともに,不具合箇所をできる限り発見してその対策を講ずることを目的としており,またこの試験を通じて従業員の教育訓練が併せ行われている。
 ウラン試験の実施に伴い,これまでに再処理施設内でいくつかの不具合な点が発見されている。このうち,主要な2件の内容は次のとおりである。

 ウラン試験の過程で発見されたこれら機器の不具合については,現在,その手直しが進められているところである。
 なお,科学技術庁では,ウラン試験の実施中に適時立入調査を実施して,これらの不具合箇所の状況や原因を詳細に調査し,併せて所要の対策を的確に講ずるよう動力炉・核燃料開発事業団を指導しているほか,本年3月から,学識経験者からなる「再処理施設技術検討会」を開催して,再処理施設の試運転及び操業運転時の安全性の確保に係る技術的専門事項について,必要に応じ学識経験者の助言を得て,より的確な安全規制を実施することとしている。
③ ホット試験開始前の安全性の確認
 ウラン試験終了後,実際の使用済燃料を用いた本格的な試運転(ホット試験)を行うこととなるが,このホット試験開始までには,前述の原子力委員会決定「動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設の安全性の確認に係る手続きについて」に基づき,ホット試験に係る試運転計画について安全性の確認を行うとともに,昭和41年7月7日の原子力委員会決定に基づき,低レベル廃液の海への放出に係る詳細な審査を実施する等の措置を講ずることとしており,これらの措置によって再処理施設の安全の確保に万全を期することとしている。
 このうち,低レベル廃液の海への放出に係る詳細な審査については,昭和50年7月から審議を開始しており,「再処理施設安全審査専門部会」の施設関係分科会及び環境関係分科会においてそれぞれ施設面及び環境面の調査検討を進めてきたが,現在,この審査は「核燃料科安全専門審査会」再処理部会に引き継がれ,同部会において調査検討を進めているところである。
 なお,本格操業開始前には,さらに原子力委員会において,ウラン試験及びホット試験の結果を総合的に評価して,安全性の確認を行うこととしている。


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