第2章 核燃料サイクル
2 ウラン濃縮

(1)ウラン濃縮の需給バランス

 我が国の原子力発電は,当分の間は軽水炉が主流を占めるものと考えられ,その開発規模の拡大にともない,ウラン濃縮の需要も著しく増大し,昭和60年度4,900万KWの原子力発電規模に対しては分離作業量として,年間5,100トンSWUのウラン濃縮が必要となる見込みである。
 このような必要量に対して我が国の電気事業者は,米国から約5,100万KW分の濃縮役務の供給を受け,さらにフランスを中心とするユーロデイフ社から昭和55年以降10年間にわたり約900万KW分(毎年1,000トンSWU)濃縮役務の供給を受けることとなっている。このように,昭和60年度4,900万KWの原子力発電規模に必要なウラン濃縮役務は確保されているといえるが,昭和60年度以降の所要量の確保については,供給源の多角化のため国際濃縮計画への参加を考慮するとともに,国産濃縮工場の建設のための技術開発を進める必要がある。
① 日米原子力協力協定に基づく供給確保
 現在,自由世界でウラン濃縮役務を供給しているのは米国のみであり,我が国は,昭和48年12月に発効した新日米原子力協力協定に基づき,最大6,000万KWまでの発電用原子炉に必要なウラン濃縮役務の供給を,米国の供給能力の範囲内で,協定の有効期間中(2003年)まで受けることが可能となっている。
 この協定に基づいて,我が国の電気事業者は米国エネルギー研究開発庁(ERDA)とすでに約5,100万KW分の発電用原子炉に必要な濃縮役務契約を締結している。
② ユーロデイフ社からの供給確保
 昭和48年9月の田中総理とメスメル仏首相との会談での合意に沿って,我が国の電気事業者はユーロデイフ社から1980年~1989年の10年間に,毎年1,000トンSWU(約900万KW相当)を購入する契約を昭和49年1月締結した。
③ このほか,国際濃縮計画への参加の可能性を検討するため,原子力委員会は昭和47年1月以来「国際濃縮計画懇談会」を開催し,米国における第4工場以降の濃縮計画あるいは西欧諸国の濃縮計画への参加の可能性,我が国とオーストラリアとの間のウラン濃縮に関する共同研究の進め方等について検討してきた。この「国際濃縮計画懇談会」は,本年3月の「核燃料サイクル問題懇談会」の開催により,発展的に解消された。

(2)ウラン濃縮技術の研究開発

 動力炉・核燃料開発事業団では,「ウラン濃縮技術開発懇談会」が昭和47年10月にとりまとめた研究開発基本計画に沿って,遠心分離機の開発,安全工学研究,量産技術開発,寿命試験等所要の研究開発を進めるとともに,昭和48年度に建設した第一次カスケード試験装置及び昭和49年度に建設した第二次カスケード試験装置の運転試験を行い,プラントシステム確立のための諸データを得ることとしている。
 本年度には,「核燃料サイクル問題懇談会」において,遠心分離濃縮技術の総合的な評価検討を行い,これを踏まえて,濃縮パイロットプラントの建設に昭和52年度から着手することとしている。また,レーザ法によるウラン濃縮の研究については,本年度から日本原子力研究所及び理化学研究所において進めている。


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