第1章 原子力発電
4 原子力発電所の立地推進

(1)原子力発電所立地調査

 国による原子力発電所の立地調査は,昭和38年度より行われており,全国的な立場から,地質,気象条件等についての調査が行われている。この調査は,原子力発電所の用地としての適地条件を判断する資料となるとともに,将来電気事業者が地点を選定する場合に,立地のガイドラインとなるものである。
 昭和50年度には北海道稚内市及び石川県珠洲市でこの調査を実施した。

(2)電源三法の運用

 電源三法(発電用施設周辺地域整備法,電源開発促進税法,電源開発促進対策特別会計法)は,発電用施設の設置の円滑化に資することを目的として,昭和49年度に制定された。
 本年9月末までに,発電用施設周辺地域整備法に基づく地点指定はこれまで5回行っており,95地点(うち原子力関係は17地点)が指定された。
 また,同法に基づく整備計画の承認はこれまで6回行っており,上記95地点のうちの78地点(うち原子力関係は16地点)について,71計画(うち原子力関係は12計画),交付金総額462億円相当分(うち原子力関係は291億円相当分)が承認されている。これに基づき,発電用施設の周辺の地域における公共用施設の整備のための費用として,電源立地促進対策交付金が関係地方公共団体に対して交付されることとなっている。
 また,電源開発促進対策特別会計法に基づき,原子力発電施設等が設置され,または設置が予定されている地域等における環境監視施設の設置等の費用に充てるため,放射線監視交付金,温排水影響調査交付金,広報対策交付金等が関係都道府県に対して交付されることとなっており,昭和50年度においては,7.9億円が交付された。
 このほかに,原子力発電施設等の安全性に関する地元住民の不安を解消し立地の円滑化に資するため,実規模または実物に近い形で原子力発電施設の安全性実証試験等を実施しているが,本年度においては,新たに大型再冠水効果実証試験委託費,バルブ信頼性実証試験委託費,核燃料信頼性実証試験委託費,大規模発電所取放水影響調査委託費,地熱発電所熱水有効利用調査委託費の5項目が追加された。

(3)原子力発電所設置に係る訴訟

 昭和48年以来,原子力発電所の設置許可に対して行政訴訟や異議申立てが行われ,現在,伊方発電所,東海第二発電所及び福島第二原子力発電所についての行政訴訟が係争中である。

(4)公聴会の開催

 発電用原子炉の設置許可にあたり,地元住民の生の意見を聞き,これを安全審査に反映させるべきであるとの要請に鑑み,原子力委員会は,必要な場合公聴会を開催することとして,昭和48年5月にその開催要領を決定した。
 これに基づき,昭和48年9月18日と19日に福島市において,福島第二原子力発電所の原子炉の設置について,公聴会を開催した。
 この公聴会では,原子炉の安全性,環境問題,地域開発などについて意見が述べられ,これらの意見に対する検討結果は昭和49年4月に公表された。
 また,東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所の設置についての公聴会は,本年,これを開催するため,開催時間の延長,開催者側としての説明・見解表明を行う機会の増加等の措置を図ったが,地元開催にはいたらずこれに代えて地元利害関係者の意見を文書で聴取し,安全審査等に反映させることとし,意見の提出を求めた。本年8月に締切ったところ地元利害関係者から524通の文書意見が提出され,現在,その整理検討を進めている。

(5)安全審査関係資料の公開
 原子力関係の資料を公開することは,原子力に関する国民の理解の向上にとって重要であり,昭和48年5月,原子力局に公開資料室が設置された。発足当初,公開資料室では原子炉設置許可申請書,同添付書類,安全審査報告書等を縦覧に供していたが,昭和50年7月にはさらに原子炉安全専門審査会の各部会における参考資料をも公開することとした。これらの資料は,国立国会図書館のほか,原子力施設が設置される都道府県(担当部局及び図書館)にも配置され,公開されている。


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