1 原子炉製造

 現在我が国で運転中及び建設中の発電用原子炉は日本原子力発電株式会社の東海原子力発電所の1号炉を除いて,核燃料として濃縮ウランを使用する軽水炉(BWR,PWR)である。また,電力会社が計画している原子力発電所の建設も具体的になっているものはすべて軽水炉である。
 軽水炉技術については,東芝,日立がゼネラル・エレクトリック(GE)社からBWRを,三菱がウエスチングハウス(WH)社からPWRを技術導入し,原子炉の供給を行ってきた。これによって各クラスの第1号炉はG E,WHが主契約者として建設を進めてきたが,それ以後の原子炉については,日本のメーカーが主契約者となって建設を行っており,原子力発電所の建設も30万kWクラス,50万kWクラス,80万kWクラス,100万kWクラスとスケールアップしてきている。
 原子炉機器の国産化の状態についてみると,現在建設あるいは計画段階にあるものはほとんど90%程度の国産化率に達しており,次第に国産化体制が整ってきている。しかし,原子炉の安全上とくに重要な機器で,高度の信頼性の実証性が要求される一部のポンプ,バルブ等は原子力発電所に安定して供給し得るレベルには達しておらず,海外メーカーとの技術援助契約によって国産化に努めている。制御棒,制御棒駆動装置については,近年メーカーが実物を試作し各種実証試験を行い,その高度の信頼性を実証したので一部の取替え用として採用されはじめている。
 我が国の原子力産業はこれまでの経験を通して技術の国産化に努めてきたが,まだ海外において主契約者の地位を確立するまでに至っていない。しかし,タービン,圧力容器,被覆管等の一部の原子力機材については技術の優秀さが認められて海外の原子力発電所の建設に納入されはじめている。
 今後においては,単に既存の技術をそのまま吸収するのではなく,原子力発電所の信頼性を向上させることが必要である。そのためには,優秀な人材の確保,相互協力と適切な分担体制の確立などにより,供給能力の拡大を図るとともに安全技術の確立に今後一層努めることが必要である。


目次へ          第8章 第2節へ