第8章 原子力産業

 我が国の原子力開発が本格的に開始して以来,はや20年の歳月を経ようとしている。
 この間,原子力は原子力発電,放射線の利用等においてすでに国民生活の中に深く浸透し,産業の合理化,エネルギー源の一翼を担うまでに至っている。
 原子力開発を進める原子力産業についてみると,自主的な研究開発投資,海外からの技術導入,人材の養成等によるこれまでの地道な産業基盤の強化活動を通じて,原子力発電機器供給メーカー,核燃料加工メーカー  RI・放射線取扱メーカーにおいては,ほぼ産業としての形態を確立するまでに至っている。ところで,原子力産業,とくに原子力発電所を最終需要とする供給産業は研究開発集約型産業として,これまで常に赤字が宿命的なものとされてきたが,最近の経済情勢の中で,コスト増による赤字の一層の増大,資金難及び原子力発電所の立地難による先行き需要の不安による設備投資の減少といった事態に直面しており,我が国の原子力開発の順調な進展を図るためにも,その健全な産業基盤の整備・強化が望まれる。
 原子力産業は新しい産業であり,その技術は機械,電気,化学,金属,土木等きわめて広範な既存技術との融合からなっている。そのため,我が国の原子力産業は在来の産業の多くの分野と密接な関連を有しており,多くの場合在来の企業が原子力部門を設け,各企業は資本系列を通して原子力産業グループを形成している。主なグループには住友グループ(住友系),第一原子力グループ(富士電機系),東京原子力グループ(日立系),三井グループ(三井系),三菱グループ(三菱系)がある。
 欧米先進諸国と比較して遅れて原子力開発に着手した我が国では,原子力発電の早期実用化を図るため,英米の外国技術の導入により,原子力発電所の建設を進めてきた。そして軽水炉技術については導入以来,技術を吸収,蓄積し,主契約者として軽水炉の建設をうけおうことができるまでに発展してきている。
 また,将来炉については,我が国は自主開発により開発を進めており,原子力産業は国が策定した計画に参加することにより,技術の習得に努めている。


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